孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

中国  「一人っ子政策」のもたらす歪 黒孩子(ヘイハイズ)に人口構成のゆがみ

2011-05-21 19:48:03 | 世相

(子供の代わりに犬・・・でしょうか? それにしても親子のように似ている・・・なんて失礼なことを言ってはいけません。 “flickr”より By \!/_PeacePlusOne http://www.flickr.com/photos/dragonpreneur/5725783824/

【“一匹政策”】
中国は、いろいろな変化の動きはあるものの、基本的には「一人っ子政策」を続けていますが、中流階級が増加する上海では、飼い犬についても「1世帯あたり1匹まで」とする条例が施行されたそうです。

****犬は1世帯1匹まで」、上海で新条例施行****
上海で15日、「飼育できる犬は1世帯あたり1匹まで」とする新たな条例が施行された。中国国営英字紙の上海日報などが16日、伝えた。

上海では、中流階級の急速な増加とともに犬を飼う家庭も急増している。犬の増加にともない、犬の吠え声や汚物放置などの問題、さらには犬が人を襲う危険性が高まっていたという。
上海市当局は市内に80万匹の飼育犬がいると公表しているが、これまでの報道によれば登録済みの犬は、そのうちのわずか4分の1程度だった。
当局は新条例の施行にあたり、飼い犬の登録を促進するため登録費用をこれまでの2000元(約2万5000円)から500元(約6200円)に大幅値下げした。

施行前から飼っていた犬については2匹以上の飼育も認められるが、全ての飼い犬を登録する必要がある。登録費用が安くなるまで登録を見合わせる人が多かったことから、この週末には多くの飼い主がマイクロチップの埋め込みやワクチン接種のため、飼い犬を連れて施設に殺到したという。
また当局は、登録費用の支払いを嫌って飼い犬を捨てる人も多いと予測して、動物保護施設も拡充した。【5月16日 AFP】
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飼い犬の“一匹政策”はともかく、「一人っ子政策」の方は、人口爆発を防止することができたものの、それにともなう歪も多く報じられています。

赤ん坊をさらって転売する中国の役人
センセーショナルなところでは、1人っ子政策の推進を担当する家族計画担当の地方当局者が、親から赤ちゃんを強制的に取り上げ、国際養子縁組で利益を得ていたという事件も明るみに出ています。

****一人っ子政策」悪用の赤ちゃん連れ去り、中国当局が捜査開始****
中国政府は10日、人口計画出産委員会の関係者が、1家庭の産児数を制限する「一人っ子政策」を悪用して子どもたちを人身売買していた疑いについて、調査を始めたことを明らかにした。
中国誌「財新」が、湖南省の同委員会当局者らが、子どもたちを連れ去り、米国やオランダ向けの養子縁組組織に売り飛ばしていた疑いがあるとの報道をうけたもの。
財新は、同省では20人前後の子どもたちが、「一人っ子政策」違反との理由で強制的に家族から引き離され、養子縁組組織に売られ海外に引き取られていったと報じている。

■出稼ぎ中に連れ去れた娘、米国で7歳に
被害にあったある夫婦は、「一人っ子政策」に違反していなかったにも関わらず、夫婦が広東省深センに出稼ぎにいっている間に、初めて生まれた女の赤ちゃんを当局に連れ去られてしまった。夫婦が娘の行方を捜したところ、娘は米国の家庭に引き取られていたことを突き止めた。娘は7歳になっていた。

湖南省隆回県の役人は、子ども1人につき養子縁組組織から1000元(約1万2500円)、海外への養子縁組が成立した場合には3000ドル(約24万円)を報酬として受け取っていた疑いがあるという。
人口計画出産委員会の関係者が、「一人っ子政策」を悪用して私腹を肥やしているとの批判は初めてではないが、財新の報道は同政策が不均衡に適用されている実態を改めて浮き彫りにした。
財新によると、子どもの連れ去り事件は2005年ごろをピークとして、10年あまりにわたって続いたという。
過去数十年で、養子として海外に出された子どもたちは約8万人に上るとみられ、その多くは米国の家庭に引き取られている。【5月11日 AFP】
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これは「一人っ子政策」の弊害、歪というよりは、最低限のモラルの欠如というべき社会の根幹的問題です。
1人っ子政策は導入から30年以上がたちますが、地方当局はこれを厳守して目標を達成するため、中絶の強要や不妊手術の強制など過激な手段を続けてきたとも言われています。
しかし、親から赤ちゃんを強制的に取り上げて海外に売り飛ばすというのは、まるで封建時代の極悪非道な役人のやり様です。
経済成長を遂げ、政治的にも存在感を強める中国への信頼感がいまひとつ持てないのは、カネ儲けのためなら何でもするという風潮が広がる中国社会のモラルの欠如が原因と思われます。

国勢調査で明るみに出る黒孩子(ヘイハイズ)の存在
「一人っ子政策」のもたらす歪として、しばしば取り上げられるのが、二人目以降の子供の出生登録をしないことから生じる、黒孩子(ヘイハイズ)または黒子(ヘイズ)と呼ばれる戸籍を持たない子供達です。
これまで、その数は数千万~数億人とも言われ、実数ははっきりしていませんでしたが、2010年の国勢調査は、戸籍のない人の数が総人口の約1%にあたる約1300万人に上るとしています。

****中国、一人っ子政策が招いた1300万人無戸籍*****
中国が2010年に行った国勢調査で、戸籍のない人の数が総人口の約1%にあたる約1300万人に上ることが分かった。
国家統計局の馬建堂局長が4月末、中国メディアに明らかにした。

無戸籍者の大部分は、国策による産児制限、通称「一人っ子政策」に違反したものという。中国では同政策の規定を上回る数の子供を出産した場合、多額の罰金を支払わなければならないため、無戸籍者が多い。同統計局などは調査実施にあたり、罰金の減額や分割払いを認める規定を示して無戸籍者のいる家庭に協力を促した結果、膨大な数の無戸籍者が判明した。

今回の国勢調査で、中国の総人口は13億3972万4852人となり、前回調査時(00年)に比べ7390万人増加した。農村からの出稼ぎ労働者(民工)などの流動人口は2億2143万人で、同1億36万人増となった。【5月11日 読売】
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戸籍を持たない黒孩子は、教育や社会福祉政策の枠組みから締め出され、当人にとっても、社会全体にとっても大きな問題となります。
今回国勢調査は“無戸籍者のいる家庭に協力を促す”ことで、この把握に努めたようですが、当然ながら、そうした“協力”を拒んで未だ闇にいる子供たちも多いと思われます。1300万人という数字は、実態より相当に小さい数字ではないでしょうか。

【「世界の工場」の終焉
「一人っ子政策」のもたらす最大の問題は、人口構成のゆがみでしょう。

****中国の青少年人口、総人口に占める割合が急減=社会問題へ発展の可能性も―ユニセフ****
2011年5月18日、国際連合児童基金(ユニセフ)はレポート「2011年世界の子供の情況(The state of the world’s children)」(中国語版)を発表した。中国の青少年人口が総人口に占める割合は、2000年の18%から、2009年には13%へと大きく減少した。19日付で中国青年報が伝えた。

レポートによると、09年の世界の青少年(10~19歳)人口は総人口の18%に当たる12億人に達し、1950年に比べ2倍以上に増加した。このうちの88%が発展途上国で生活し、半数以上は南アジアや東アジア、太平洋地域に集中している。

一方、中国の青少年人口は、00年の2億2800万人から、09年には1億8000万人へと減少している。こうした変化によって、中国の今後の労働市場は「世界の工場」から付加価値の高い産業を中心とする市場へと、構造的な変換が求められることになる。

中国の青少年人口の男女比も、男118:女100と大きく偏っており、適齢期青少年の結婚難など、今後大きな社会問題を引き起こすと予想されている。また、青少年期の男女が等しい教育機会や職業選択機会を得られるよう確保すること、都市化への過程で発生する留守番児童(両親の都市への出稼ぎにより農村で暮らす児童)や都市部での流動児童(出稼ぎの両親と暮らすが教育等で差別を受ける児童)の問題などが挙げられている。【Record China 5月21日】
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中国は近い将来、相対的に異常に少ない生産年齢人口で多くの老年人口を扶養していかねばならない、厳しい“少子高齢化”の問題に直面します。
問題は日本でも同様ですが、「一人っ子政策」によるゆがみがある分、中国の方が厳しいと言えます。
“少子高齢化”が深刻化するまでに、十分な豊かさを実現できるか・・・時間との競争です。
ここ当分は“中国の時代”ですが、やがてインドが中国にとってかわると見られるのも、こうした背景があります。


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