孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

トランプ大統領  ガザ住民をヨルダン・エジプトに「一掃」する「ガザ再建案」

2025-01-26 21:48:57 | パレスチナ

(破壊された街並み=パレスチナ自治区ガザ地区北部ジャバリアで2025年1月21日、ロイター)

【イスラエル 60日の停戦期限も、レバノン南部から軍撤退せず】
昨日に続き中東情勢で「またか」と言われそうですが、昨日ブログで取り上げたレバノンについては、やはりイスラエル軍はレバノン側の停戦合意履行が不十分として期限までには撤退しないようです。

****イスラエルとヒズボラ60日の停戦期限も軍撤退せず…レバノン南部に帰還の住民3人死亡****
イスラム教シーア派組織「ヒズボラ」との間で停戦合意したイスラエルが撤収の期限を過ぎてもレバノン南部に軍を駐留させ、住民を攻撃しています。

レバノン保健省は26日、南部の地域に戻ろうとした住民がイスラエル軍の攻撃を受け、これまでに3人が死亡し、44人がけがをしたと明らかにしました。

イスラエル軍の報道官は、レバノン南部の住民に対して「通知があるまでは自宅に戻ることを禁止する」と警告しています。

去年11月から始まったイスラエルとヒズボラの60日間の停戦を巡っては、1月26日までに双方がレバノン南部から撤退し、代わりにレバノン軍が監視にあたることになっていました。

イスラエルはレバノン政府が合意の内容を実行していないと主張し、交渉を仲介するアメリカに30日間の猶予期間を設けるよう求めていました。【1月26日 テレ朝news】
************************

【イスラエル支持を鮮明にするトランプ大統領 2000ポンド爆弾のイスラエル供与停止を解除】
30日間の猶予期間を要請されたトランプ大統領がどのように答えたのかは知りませんが、かねてより、また1期目でもイスラエル支持の立場のトランプ大統領は、2期目でもイスラエル支持を鮮明にしています。

****トランプ政権 イスラエルへの大型爆弾供与停止措置を解除 米メディア報道、バイデン政権から方針転換*****
アメリカのトランプ政権がイスラエルに対する大型の爆弾の供与停止措置を解除したと報じられました。バイデン政権からの方針転換です。

アメリカのニュースサイト「アクシオス」は25日、トランプ政権がイスラエルに対する大型で威力の強い「2000ポンド爆弾」の供与停止措置を解除したと伝えました。

この爆弾は前のバイデン政権が去年5月、イスラエルによるパレスチナ自治区ガザ南部・ラファへの侵攻に反対姿勢を示すため、供与を停止していましたが、イスラエル寄りのトランプ政権の誕生で方針転換となります。

「アクシオス」はアメリカで保管されている「2000ポンド爆弾」1800発が近く、イスラエルに船で運ばれる予定だと伝えています。【1月26日 TBS NEWS DIG】
*********************

イスラエル軍はこれまでもガザ地区の病院周辺で2000ポンド(約900kg)爆弾を使用していると報じられています。「直接病院を攻撃したわけではない」という弁解のためでしょうか。

****ガザ攻撃のイスラエル軍、ほぼ全病院の至近距離に2000ポンド爆弾投下 米研究****
イスラエル軍がパレスチナ自治区ガザ地区で戦争を始めてからの数週間で、強い破壊力をもつ2000ポンド(約900キロ)爆弾をほぼ全病院の至近距離に投下していたという検証結果が9日、査読付きの学術誌に発表された。

米ハーバード大学などの研究チームが爆発の衝撃でできたクレーターを分析した結果、2023年10月7日から11月17日にかけ、イスラエル軍がガザにある全病院の25%で「殺傷範囲」に2000ポンド爆弾を配備していたことが分かった。

さらに、ガザの36病院のうち83%にあたる30病院では、施設の損壊やけが人が発生する範囲内で、爆弾クレーターが見つかった。

検証結果は学術誌プロス・グローバル・パブリック・ヘルスに発表された。イスラエル軍は今もガザ北部の三つの病院に避難命令を出し、軍事作戦を再開している。ガザ保健省は全ての医療機関の保護を訴えている。

論文を発表したハーバード大学のデータアナリスト、デニス・クニチョフ氏は、病院の至近距離で2000ポンド爆弾が使用されたことについて「米国の供与したツールを使った明らかな国際人道法違反」と指摘した。

同氏は2000ポンド爆弾について、「地面に着弾すると、約1000ポンド(約450キロ)の破片をとてつもないスピードで放つ」「その威力と破片で数百メートル離れた人々を殺し、コンクリートを破壊できる」と話している。

これに対してイスラエル国防軍は、「前例のない努力を行って軍事施設や目標、工作員を正確に攻撃している」と述べ、国際法に従って「民間施設や民間人は標的としていない」と強調した。【2024年10月10日 CNN】
**********************

今後の使い道としては、後述のようにガザ地区から住民を退去させ、残ったハマス戦闘員と推定去れる者を一網打尽にするため、あるいは、地下のトンネルや軍事利用可能な施設を破壊するため・・・・でしょうか。

【多大な時間を要するガザ復興】
ガザ地区はまだ瓦礫の中からの遺体捜索が行われている状況ですが、ほぼ全ての住民の住宅が破壊されたという状態で、今後の復興が大きな難題となっています。

****ガザ230万人のほぼ全員が家を失った 21歳女性「何もかも足りない。教育を受けることだけが支え」****
爆弾の雨が降り、パレスチナ自治区ガザの街並みは荒廃した。シェイマ・アブアラッタさん(21)にとって、15カ月続いた攻撃のトラウマを乗り越える唯一の手段は、「教育を受ける」ことだった。

コンピューターサイエンスとコンピューターエンジニアリングを学ぶアブアラッタさんは、得た知識をガザの復興に役立てたいと考えている。基本的なライフラインさえ途絶えたガザで、人々はあらゆるものが不足する中で生活している。

「私はこの国に、自分が今いる場所に留まりたい。親族や愛する人と一緒にいたい」とアブアラッタさんは言う。
綱渡りのような停戦が実現した今、パレスチナの人々は恐る恐る復興を見据え始めた。230万人の住民全体が家を失い、複数回にわたり避難を強いられただけに、一筋縄ではいかない大仕事だ。

ガザ侵攻の間、アブアラッタさんにとって唯一自分でコントロールできたのは勉強を続けることだった。攻撃開始後の最初の3カ月は何もできず、ようやくノートパソコンを開いたとき、感極まって涙がこぼれた。

北部への空爆から逃れ、ガザ中心部で電話インタビューに応じたアブアラッタさんは、「何かを達成できる機会があるというのは、これほどにも恵まれたことなのか、と感じた」と話す。

イスラエル軍の作戦でガザの大半が瓦礫の山となり、ガザ医療当局によれば、少なくとも4万7000人が命を落とした。ガザ医療当局は、がれきの下にはまだ多くの遺体が埋まっている可能性が高いとしている。

停戦合意では、ハマスに拘束されたイスラエル人と外国人98人のうち33人を解放することが決まっている。また、イスラエルは毎日600台のトラックによる支援物資の搬入を6週間許可するという。
アブアラッタさんは「国境を制限なしに開放する必要がある。何もかもが足りない」と言う。

彼女にとって懸案の1つは「電気の確保」だ。毎日テントから充電拠点まで歩き、ネットに接続する。戦火が止めば、この地域にも太陽光発電パネルが増えることを期待している。

「がれきを片付け、その上にテントを張らなければならない」と彼女は言う。「テント生活から始め、ゆっくりと発展させていく」。だが、口で言うほど簡単ではない。

<「想像を絶する」規模の人道危機>
慈善団体「セーブ・ザ・チルドレン」のアレクサンドラ・サイエ氏はトムソン・ロイター財団の取材に対し、人道上の危機は、「およそ想像を絶する」と語った。「複数の差し迫った危機が進行していて、それぞれがお互いに深く絡み合っている」

セーブ・ザ・チルドレンは、子どものための食料と水、医薬品を送ることが優先だとする。
「飢餓の影が忍び寄る中で、空腹と病気に直面している子どもたちを一刻も早く救わなくてはいけない」とサイエ氏は言う。

国連では、4200万トンに及ぶガザのがれきを撤去するには、10年以上の時間と12億ドル(1872億円)の費用がかかるだろうと述べている。

また、支援団体「アクション・アゲインスト・ハンガー」の運営トップを務めるビンセント・ステーリ氏は、淡水化プラントを動かすための燃料も不可欠だと指摘する。上水道網を修復するには金属製パイプなどの物資が必要になるが、イスラエルは今のところ、こうした品目のガザ搬入を禁止している。

「がれきの撤去を10-15年も待っていられない」とステーリ氏は言う。「復興を始め、重要な施設の復旧に着手する必要がある」

アブアラッタさんも同意する。彼女はガザを本拠とする大学がオンライン講義を中断したため、学費無料の「ユニバーシティ・オブ・ピープル(UoPeople)」でコンピューターサイエンスを学び始めた。来年には卒業できると考えている。

UoPeopleのシャイ・レシェフ総長はトムソン・ロイター財団に対し、ガザの学生への奨学金支給のために30万ドルを集めたと語った。「さらに募金が集まったとしても、ガザの学生のために、できるだけ多くの資金を集めたい」と総長は言う。

しかし、学校や大学が再建されるのを待っていては、学生たちの教育には間に合わない。
「今の子どもたち、学生たちはどうする。オンラインで教えるしかない」【1月26日 Newsweek】
**********************

【トランプ大統領 ガザ住民をヨルダン・エジプトへ「一掃」する再建案 新たな「ナクバ」と混乱を生む懸念】
今後のパレスチナ統治については、(イスラエル・トランプ政権意外の)国際的にはパレスチナを国家承認してイスラエルとパレスチナ国家が共存する「二国家共存」「二国家解決」しかないと考えられています。

しかし、トランプ大統領は「全く異なる方法」でのガザ再建(?)を考えているようです。
現在のガザ住民(210万人とも150万人とも)をヨルダンやエジプトに移し、ガザ地区はイスラエル支配下の入植地にするというもののようです。

****トランプ氏、ガザ「一掃」計画提示 周辺国はパレスチナ人受け入れを****
ドナルド・トランプ米大統領は25日、パレスチナ自治区ガザ地区を「一掃する」計画を提案し、中東和平を実現するためにエジプトとヨルダンにガザのパレスチナ人を受け入れるよう呼び掛けた。

トランプ氏は現在のガザを「解体現場」と表現。この問題についてヨルダンのアブドラ国王と話し合ったとし、26日にはエジプトの大統領と協議する予定だと述べた。 

トランプ氏は大統領専用機「エアフォースワン」の機内で記者団に、「エジプトに(ガザの)人々を受け入れてほしい。ヨルダンにも受け入れてほしい」「(ガザには)おそらく150万人ほどがいるが、われわれはそのすべてを一掃する。その場所は何世紀にもわたって多くの紛争を抱えてきた。そして何かが起こらなければならない」と語った。 

ガザの人口240万人の大多数は、2023年10月7日のイスラム組織ハマスの対イスラエル越境攻撃を発端とした戦闘により、繰り返し避難を余儀なくされている。 

トランプ氏は、ガザの住民を移動させることは「一時的かもしれないし、長期的かもしれない」と述べた。 

その上で、「そこは今、文字通り解体現場だ。ほとんどすべてが破壊され、人々がそこで死んでいる」「だから、いくつかのアラブ諸国と協力して、彼らが平和に暮らせるかもしれない別の場所に住宅を建てる方がいい」と語った。 

イスラエルの報復攻撃により、ガザの大部分は廃虚と化した。インフラが破壊され、国連(UN)は、再建に何年もかかるとみている。【1月26日 AFP】 AFPBB News
******************

不動産業者的な再開発の発想でしょうか。 確かに、現地で再建するより「効率」はいいかも。
 
しかし、ずいぶんとイスラエル・アメリカに都合のいいような「再建」のようにも思えます。

ヨルダン・エジプトには「力」と「カネ」でガザ住民受入れ要求をのませるのでしょうか。
ガザ住民は? 自分たちが破壊しておいて、「平和に暮らせるかもしれない別の場所に住宅を建てる方がいい」と言われても・・・

そもそも現在のパレスチナの混乱は、1948年のイスラエル建国時にパレスチナ住民75万人を故郷から追い払ったことから起きています。パレスチナ側ではこれを「ナクバ(大惨事・大破局)」と呼んでいます。

あらたなヨルダン・エジプトへの強制移住はその「ナクバ」の拡大版再現であり、さらなる混乱を惹起するようにも思えるのですが。

似たような発想は以前からイスラエルにもあります。

****イスラエル、ガザ住民をシナイ半島に強制移住 文書流出****
イスラエルの情報省がパレスチナ自治区ガザの住民をエジプトのシナイ半島に強制的に移住させる計画案を作成していたことが判明し、物議を醸している。1948年のイスラエル建国と第1次中東戦争によってパレスチナ難民が生まれたことを想起させるためだ。

ガザには200万人以上のパレスチナ人が居住している。移住案はパレスチナ人やアラブ諸国の強い反発を呼ぶ可能性がある。(後略)【2023年10月31日 日経】
*****************

なお、トランプ大統領は大統領令で、イスラエル占領下のヨルダン川西岸でのパレスチナ人に対する暴力に関与したユダヤ人至上主義者入植者やシオニスト団体に対する制裁を停止しました。
コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« レバノン  「薄氷の停戦」... | トップ |   
最新の画像もっと見る

パレスチナ」カテゴリの最新記事