(左傾化する民主党から距離、共和党との和解を唱える47歳の中道派 共和党の牙城テキサス州から現れた「民主党のホープ」ベト・オルーク氏 画像は【4月1日 JB Press】)
【強力な反撃材料を手に入れたトランプ大統領】
3月23日から一昨日の4月2日までパキスタンに旅行していたため、この間のニュースについては、ほとんどフォローできていません。浦島太郎状態です。さすがに「令和」になったのは知っていますが。
そういう状態で、ポツポツと垣間見たニュースのなかには、うんざりさせられるものが。
モラー特別検察官の報告に関して、トランプ大統領が「勝利宣言」して、再選に向けて始動している・・・という話です。
****ロシアと共謀疑惑は「シロ」、トランプ氏再選に追い風か****
2016年米大統領選へのロシア介入疑惑(ロシア疑惑)を巡り、モラー特別検察官はトランプ陣営とロシアの共謀を認定しなかったことが判明した。
これによってトランプ大統領は、ロシア疑惑を追及してきた野党・民主党に対する強力な反撃材料を手に入れた形だ。今のところ見通しが厳しい再選に向けた追い風になる可能性もある。(後略)【3月25日 ロイター】
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****トランプの勝利宣言が意味するものとは?****
今回のテーマは、「トランプの勝利宣言と民主党の対策」です。ウィリアム・バー米司法長官は3月24日、ロシア疑惑に関してトランプ陣営とロシア政府の共謀は認定できなかったと米議会に報告しました。
ロバート・モラー特別検察官の捜査報告書は、司法妨害を巡っては判断を示しませんでした。(中略)
トランプ大統領は、「共謀はなく司法妨害もなかった。完全かつ潔白が証明された」と自身のツイッターに投稿し、「勝利宣言」を行いました。(中略)
さらに、トランプ大統領は記者団に対して「大統領がこのような捜査を受けなければならないのは国家の恥だ」と語気を強めました。自分はロシア疑惑の捜査で22カ月間も、不当に扱われてきたといいたのでしょう。
20年米大統領選挙で再選を目指すトランプ大統領は、モラー報告書を最大限活かして、議会民主党を攻撃し、支持者に対して「モラーの捜査は魔女狩りで、ロシア疑惑はでっち上げだったことが証明された」と、強くアピールするでしょう。
今後、民主党からの批判を封じ込めるための「攻撃材料」として報告書を活用する可能性は極めて高いといえます。(後略)【3月26日 海野素央氏 WEDGE】
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****トランプ氏、再選向け始動 「ラストベルト」行脚 *****
支持率低下に危機感、ロシア疑惑払拭アピール
トランプ米大統領が2020年の大統領再選に向けて始動した。28日に再選のカギを握るミシガン州で演説し、ロシア疑惑の払拭や製造業の復活をアピールした。
東部から中西部に広がる「ラストベルト」(さびついた工業地帯)で軒並み支持率が下がり危機感を募らせている。ただ「直感任せ」との指摘もある政策決定には支持者の間で戸惑いも広がっている。
「ミシガンこそが勤勉に働く愛国者が集う米国の中心地だ」。トランプ氏はミシガン州西部グランドラピッズでの演説でこう強調した。前回16年の大統領選で最後に同地を訪れたことに触れて「最もエキサイティングだった」と指摘。支持者からは「さらに4年間の任期を」との大歓声があがった。(中略)
トランプ氏が早々にラストベルトを訪問したのは支持率低下への危機感の裏返しでもある。調査会社モーニング・コンサルトによると、ミシガン州でのトランプ氏の支持率は19年2月に40%と政権発足時の17年1月に比べて8ポイント下がった。
ウィスコンシン州とペンシルベニア州もそれぞれ6ポイント、4ポイント低い。中国との貿易戦争で製造業や農業に悪影響が及んでいるためとの見方がある。(中略)
トランプ氏は巻き返しを狙うが、感覚に任せているとの声も出る政策決定が弊害になりかねない。トランプ氏は今週に入って医療保険制度改革法(オバマケア)を廃止すべきだと突然表明した。
支持基盤の保守層受けを狙ったとみられるが、中間選挙ではオバマケア死守を掲げた民主が躍進した。米メディアによると、ペンス副大統領やバー司法長官が難色を示したが、トランプ氏やマルバニー大統領首席補佐官代行が押し切った。
「代替策を見せてほしい」。老後生活を送るウェスレー・ホワイトさん(67)はオバマケア廃止に賛成しつつも、政権や共和に注文をつけた。廃止を主張するだけでは責任を果たしたとはいえないとの考えがにじむ。トランプ氏は「保険料をより安くするプランを示す」と説明するが、その具体策は見えていない。(後略)【3月29日 日経】
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なお、ロシア疑惑捜査をめぐりバー司法長官が示した「シロ」判断については異論も出ていますが、いったん「シロ」「魔女狩り」といった方向に向いた流れは大きくは変わらないようにも思えます。
****トランプ氏に「不利な内容」も=疑惑捜査結論で検察不満―NYタイムズ****
米紙ニューヨーク・タイムズ(電子版)は3日、トランプ政権のロシア疑惑捜査をめぐりバー司法長官が示した結論について、モラー特別検察官のチーム内に不満が出ていると報じた。捜査結果が「(バー氏の結論より)トランプ大統領に不利な内容」であるにもかかわらず、「(結論は)適切に描写していない」ためだという。(後略)【4月4日 時事】
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もともと、有権者の50%がモラー特別検察官率いる捜査を「政治的な魔女狩り」と見なしているとする調査もあります。
まあ、それはそうでしょう。いかなトランプ氏といえども、明確にロシアと共謀して・・・ということはないでしょう。
ただ、ロシアにつけいる隙をみせるような脇の甘さ・うかつさ・素人ぶり・判断の甘さ・自覚のなさ等々が明らかになれば、それを梃に・・・という期待もありましたが。
4年でも耐えられない長さなのに、8年となると・・・。
あまり大きな声で言う話ではありませんが、正直なところ、日本の首相が誰になろうと、安倍首相だろうが枝野氏だろうが、常識的な枠組みのなかで動くことが予想されますので、現実にとり得る選択肢は限定され、“良くも悪くも”あまり大きな変化はないようにも思えます。(政策的なレベルというよりは、個人的な好き嫌いのレベルの差異はありますが。また、任期中に経済的な変化あるにしても、それは政策的なものというよりは、経済自体の自律的な動きでしょう) 日中・日韓関係以外の国際情勢への影響もほとんどないでしょう。
一方で、アメリカ大統領が“常識にとらわれない”「直感任せ」で、その巨大な力を振り回すトランプ大統領になるか、他の人物になるかで、世界の安全保障、経済、環境等の種々の問題が大きく変わります。
【flyover peopleの心をつかんだトランプ氏】
「ラストベルト」での支持率が下がっているとの調査もありますが、岩盤支持層の健在を示す報道も多々あります。
****「無罪確定」だと喜ぶトランプ氏の支持基盤 根深いワシントン不信****
米アーカンソー州の人たちは、ムラー捜査は「魔女狩り」だと思っていたし、特別検察官の捜査報告書の結論を大いに歓迎している。ドナルド・トランプ米大統領を深く敬愛し、その分だけワシントン政界や特別検察官を深く疑っている。
ジョイス・スミスさんは、定年退職するまで看護師だった。オクラホマ州内を車で移動していた24日、報告書の内容を知った。友人からのテキストメールでニュースを知り、運転していた夫ウォルターさんに伝えた。夫妻はムラー氏の結論に大喜びした。
ワシントンの連邦議会の民主党やリベラル派などからは、捜査継続を求める声が上がるかもしれない。しかしジョイスさんは、アーカンソーに住むほとんどの人が自分たちと同意見だと言う。
「飛行機が上空を通過する地方の住人(flyover people)」と、ジョイスさんは自嘲する。「国の中央部にいて何かと飛ばされ、無視される人たち」。トランプ氏に言わせると、「忘れられた人たち」だ。
この人たちこそ、トランプ大統領の揺るぎない支持基盤だ。「トランプは無罪放免だ」とウォルターさんは言った。同じように、この土地の人たちはムラー報告書の結論を大いに歓迎した。
飛行機に通過される地方、フライオーバー・カントリー。アメリカの中心部を知る人たちにはおなじみの風景の中、スミス夫妻は車を走らせた。アメリカの町村や農村部に特徴的な、困窮と我慢強さと愛国心。それはアーカンソー州の西部や中心部でも、あちこちで目に入る。(中略)
それでもこの町に住むほとんどの人は、スミス夫妻に似ている。大統領を信じて、特別検察官も連邦議会もその他ワシントンの住人はすべて、大統領の邪魔になるだけだと考える、「忘れられた人たち」だ。
ワシントンの連中は、誰が自分たちのボスなのか忘れている」とジョイス・スミスさんは言う。「国民の私たちなのに。私たちに選ばれて、あそこにいるのに」。【4月1日 BBC】
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問題は、トランプ大統領の「直観的」施策がflyover peopleのためになるのか?というところですが。
それにしても、トランプ大統領は実に巧みにflyover peopleの心を鷲頭づかみにしています。
【本命バイデン元副大統領のセクハラ疑惑】
一方の民主党ですが、共和党が保護貿易・同盟関係を軽視したアメリカ第一といった本来の共和党の考え方とは異なるトランプ氏に引きずられているのと対照的に、大統領選挙に名乗りを上げた面々を見ると、前回選挙のサンダース氏のような左傾化した急進的リベラリズムに引き寄せされているのは周知のところです。
そうしたなかで、いわゆる中間層にも受けがいい「勝てる候補」とも見られていたバイデ前副大統領にセクハラ疑惑が出ているのも報道のとおり。
****民主党の本命バイデン氏にセクハラ疑惑「後頭部にキス」****
2020年米大統領選の民主党の候補者指名争いへの出馬が確実視され、世論調査でもトップを走るジョー・バイデン前副大統領(76)にセクハラ疑惑が浮上した。(中略)
疑惑は3月下旬、ネバダ州の元州議会議員ルーシー・フローレス氏が雑誌に寄稿したことがきっかけ。フローレス氏は14年、選挙運動で応援に来たバイデン氏に背後から髪の香りをかがれ、後頭部にゆっくりとキスされたという。「何が起きているのか理解できなかった」と語っている。(中略)
しかし、4月1日には別の疑惑も発覚。10年前に下院議員の選挙を支援していた女性が、バイデン氏から鼻をこすり合わせるような接触を受けたと告白した。この女性は声明で「(バイデン氏は)出馬をあきらめ、才能と資格をもつ女性候補を応援するべきだ」と述べた。
これまで、民主党はトランプ大統領の女性を蔑視するような言動を激しく批判してきた。党内の、しかも大統領候補の「本命」から出たセクハラ疑惑に戸惑いを隠せない。(後略)【4月3日 朝日】
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バイデン氏は「今後はもっと気をつけて他人の個人的スペースを尊重するよう留意します。それが自分の責任だし、その責任を果たします」との謝罪ツイートをしていますが、トランプ大統領は「触って楽しんだか?」とバイデン氏を嘲笑し、“不適切な接触の告発を広めているのは民主党内左派の画策だろうと述べた。トランプ氏は2日夜に共和党全国委員会の集まりで、「社会主義者がしっかり面倒見てやってる。がっちりつかまった」とバイデン氏をからかった。”【4月4日 BBC】とも。
バイデン氏については、昨年の中間選挙の際にジョージア州の知事選挙に出馬して惜敗しつつも全国的な知名度を高めた黒人女性のステーシー・エイブラムス氏がバイデン氏から副大統領候補を打診され断ったと暴露した件も話題になっています。
****突如騒がしくなった予備選レーストップのバイデン周辺****
(中略)今回の騒動は、あらためて民主党に「働き盛りの年齢」で「党内宥和のできる中道左派で、左派政策にも実行可能な中道政策にも理解が深く」「トランプ時代を帳消しにできるような女性か有色人種の新鮮味のある本命候補」というのが「いない」ことを浮き彫りにしています。民主党の予備選は、もうこの時点で泥仕合の様相を呈してきました。(後略)【4月4日 冷泉彰彦氏 Newsweek】
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【トランプ大統領が本能的な嗅覚で恐れる民主党のホープ】
ただ、トランプ時代を終わらせるのが“女性か有色人種の新鮮味のある本命候補”か?という点では疑問も。
そうしたリベラル色の強い候補では、民主党内では勝てても、本選ではflyover peopleはおろか、中間層の把握も困難かも。
バイデン氏にしても、仮に上記のようなスキャンダルがなかったにしても、いささか「昔の名前で出ている」感も。
そうしたところで期待されているのが、先の中間選挙において共和党王国テキサスで現職テッド・クルーズ上院議員をあと一歩まで追い詰めたベト・オルーク氏です。
****オルーク元下院議員が本格始動 米大統領選の民主党指名候補争い****
2020年米大統領選に向けた民主党の指名候補争いで、ベト・オルーク元下院議員(46)が30日、地元の南部テキサス州エルパソで開いた集会で出馬を正式に表明し、選挙戦を本格始動させた。
トランプ大統領の「恐怖や分断を利用する」政治手法を批判。「私たちは何においても、まず米国人だ」と述べ、米社会の結束を訴えた。
昨年の中間選挙の上院選で現職有力議員に肉薄、一気に注目を浴びたオルーク氏は、ソーシャルメディアを駆使した草の根選挙を展開する戦略で、陣営によるとこの日は全米1000カ所超で支持者が演説中継の「観戦パーティー」を開いた。
エルパソ市中心部の演説会場にも数千人が集まり盛り上がりをみせたが、オルーク氏には政策の具体性がないとの批判もある。(中略)
ベトが全米の注目を浴びたのは、先の中間選挙で下院から上院に鞍替えを試みようと上院選に出馬したとき。
2016年大統領選に立候補したことのある現職テッド・クルーズ上院議員(共和党=48)と最後の最後まで激しいつばぜり合いを演じた時からだ。
クルーズ氏も共和党内では若手ナンバーワン。議会では司法委員会や外交委員会で頭角を現している。
テキサス州は大統領選ではロナルド・レーガン氏(第40代大統領)が19980年に勝利して以来、2016年のトランプ氏まで36年間、常に共和党候補を選んできた「共和党王国」。
そこでロルーク氏は結局はクルーズ氏相手に20万票差で負けたとはいえ、得票数402万票(48.3%)を取った。これは画期的なことだった。
トランプ氏をうならせた「ソーシャルメディアの申し子」
ドナルド・トランプ大統領(72)も「テキサスの戦い」を重要視し、クルーズ候補応援に駆けつけた。その際、驚かされたのがロルーク氏の集金力だった。
今年3月、大統領選への立候補を表明した際にも表明後の24時間以内に610万ドル(約6億8000万円)の献金を集めて並み居る民主党候補たちを愕然とさせている。(中略)
ロルーク氏は、10代の頃には悪名高いハッカー集団に属したり、パンクミュージックのバンドを結成したり、コロンビア大学在学中には下院議員の臨時秘書をやったり、様々なことに手を染めてきた。
ティーンエイジャーの頃には飲酒運転も含め警察に2回ご厄介になっており、選挙のたびにライバルからは批判されてきた。しかし、「逮捕されたことで善良な市民としての責任を痛いほど学んだ。反省している」の一言でかわしてきている。(中略)
卒業と同時にインターネット会社を立ち上げ、オンライン新聞を発行するなど、起業家精神旺盛だった。この頃からソーシャルメディアは彼にとって自分の庭のような存在だった。
ところが金儲けにはあまり執着せず。32歳の時に地元エルパソ市の市長選に打って出た。
この際、威力を発揮したのがソーシャルメディアを使った人脈作りや票の掘り起こしだった。
またラティーノ有権者を引きつける流暢なスペイン語は強力な武器だった。なんと地元ラティーノ商工会議所のメンバーにすらなっているのである。
集金力+ソーシャルメディア+スペイン語――2012年の連邦下院議員選の時も、2016年の上院選の時もこの「三種の神器」が武器となった。
さらにオルーク氏にはもって生まれた人懐っこさと実直さがあった。
選挙演説も用意したスピーチを棒読みなどしない。集まった人たちの顔を見ながらその場そば場で即興的に話をする。(中略)
トランプ氏が「壁」遊説でエルパソを選んだわけ
(中略)トランプ大統領は、議会民主党の反対を押し切って着工しているメキシコ国境沿いの「壁」の重要性を国民に訴えるため、2月11日、テキサス州を遊説した。その時選んだ場所はなんとエルパソだった。(中略)
「壁」の重要性を説くなら不法移民による実害の出ている場所に行くべきだろう。エルパソは全米でも最も治安が安全な都市。凶悪犯罪は2009年に壁建設が着工される前から減っている。
それなのになぜエルパソを選んだのか。
国境沿いに「壁」を作ることに真っ向から反対してきたオルーク氏の地元に乗り込み、叩くのが目的だったことは明らかだった。
トランプ氏:昔の名前で出てくる連中は恐れるに足らず
2016年大統領選の時にトランプ選対本部の首席スポークスマンを務めた選挙戦略家のジェイソン・ミラー氏は、トランプ大統領の本心をこう明かす。
「トランプ氏にとっては、オルーク候補は民主党エスタブリッシュメントから昔の名前で出てくるような(One of the recycled Democratic establishment candidates)ジョー・バイデン前副大統領(76)やエリザベス・ウォーレン上院議員(69)、バニー・サンダース上院議員(77)といった古顔よりも手ごわい対抗馬になるだろう」
先の中間選挙で当選した下院の新人議員は概して過激派リベラルが多い。政策論争でも左傾化する傾向にある。それが民主党大統領候補指名にどう響くか。党執行部の中には憂慮する向きが少なくない。
というのもあまりにも過激派リベラル候補を選ぶようなことになれば、一般選挙民の中にはこれを嫌うものも出てくる。特に無党派層の保守的な票はトランプ氏に流れる公算大だ。
そう見ると、保守的なテキサス州で保守票を集めてきたロルーク氏の中道主義、共和党との共存、連携主義は、大統領選で勝とうとする民主党にとっては不可欠な選択肢になってくる。
民主党の選挙専門家の一人は筆者にこう指摘している。
(中略)「バイデン、サンダース、この2人がいつまでもフロントランナーで走っているのを見て一番喜ぶのはトランプ氏だろう」
「今後オルーク氏が支持率を上げてくれば、バイデン氏は自分の票をそっくりオルーク氏に譲るに違いない」(後略)【3月31日 毎日】
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