葬式の帰り急に「ETCカードが挿入されていません」と言うようになった。
エンジンを掛けると毎回このアナウンスが流れるが、その次にエンジンを掛けるまでは流れない。
だから言うようになったではなかった。
それを言い続けるようになった。
車内には私の友人夫婦の他、妻の友人も乗り合わせていた。
それぞれの話題が車内を駆け巡っていた。
その中を15分置きに、あの文句をアナウンスする。
女性たちは気にせず話に夢中になっていたが我々男性は気になって仕方がない。
友人男が言った。
「いっそカードを差しっぱなしにしたらいいんじゃないかな」
それもそうだと思い翌日入れてみた。
「カードが入っています」を繰り返し言うようになった。
それも休みなく立て続けに。
まるで黙らせようとする私に対する腹いせのように。
「俺に恨みでもあるのか」とETC車載器にぶつけた。
とりあえずカードを抜いて15分おきの我慢を選んだ。
ETC車載器の取説を探すのは明日にしてETC車載器の取り付けについても調べ始めた。
今付いている車載器と同じものを付ければ電源ケーブルやアンテナケーブルを、そのまま利用できるだろうか。
それとも、またあの電源取り出しをして余ったケーブルをまとめて隠す作業をしなくてはいけないのか。
翌日あの面倒な作業の事を考えつつ取説を探した。
幸い車検証のファイルに挟めてあった。
取説を開いてみると解決方法が見つかった。
このボタンとこのボタンを同時に押し、次にこのボタンを何回押すとこうなります。
ということで、その通り作業した。
奴は黙った。
エンジンを止めた後までカードを残しておくと「カードが入っています」とは言う。
エンジンを止める前にカードを抜いておくと何も言わない。
沈黙のありがたさを感じた、しみじみ。
喋りすぎること自体がETC車載器の寿命が近づいていることの表れでないことを祈る。