妻が買い出しに出るついでに喜んで私も付いていく。
イオンの中を歩いていたら女性に声を掛けられた。
「これ、やってみませんか」
「有料ですか?」
「いえ無料です」
「さては病院の回し者だな?」
「いえ。フランスベッドです」と彼女は答える。
「フランスベッドの回し者か」
「はいそうです」と答えた。
「ここに指を差し込んでいただくだけです。」
そして男か女か入れていただいて、年齢を入れていただきます。
女性が指でやり方を教えてくれる、その通りに従った。
右手の人差し指第一関節を測定するだけで、どれほどの事が分かるのか不明だが。
「じゃあ記録しておくかな」と言ってポケットの中からスマホを取り出し結果を撮ろうとした。
左手で右ポケットの中からスマホを出して操作し始める。
「それでしたら急いだほうがいいですよ。すぐ消えちゃいますから」
急いでスマホのカメラを起動して写真を撮ったが、全くその瞬間に画面は消えていた。
女性は「AとAですから良いですよ」と嬉しそうに伝える。
そのはしゃぎぶりからすると、めったに出ないことらしかった。
チェックシートの見方を見てみると元気度と血管健康度がAと判定されていた。
私もつられて嬉しくなったが、たかが指先のチェックで大喜びすることもないかな、と感じた。
妻との集合場所に移動している時「あの測定器でどうやってベッドの販売に関連付けるのだろうか、と考えた。
測定結果が悪かったら、思い切り脅して買わせるのだろうか?
それとも測定結果が良かったことに気をよくしてベッドを買う気になるのだろうか。
妻と合流して今あった出来事を伝えた。
駐車場に出るとモワーッとした湿気の在る熱気がまとわりついてきた。
瞬間的に日常に戻っていた。
車のクーラーのスイッチを入れたら、もう先ほどのことは忘れていた。