雪舟の達磨大師は白い衣をまとっているが、赤にするか迷う。高崎のだるまではないが、古来赤には魔除けの意味がある。雪舟の断臂図における慧可の腕の切断面は、大判の図版を見るまでは気が付かなかったくらい、ごく細く赤が引かれている。確かにおかげで画面の緊張感を壊すことなく保っているように見える。しかし私は雪舟作に描かれていない、切断に用いた剣を雪に突き立てるつもりでいるし、数滴血を滴らせるつもりでいる。その僅かな赤と達磨大師の衣の赤と対応させたいと考えたが、唯一の赤が慧可の僅かな血の滴り、やはりその方が作品のテーマからしてふさわしいかもしれない。今回は出来るだけ撮影時に下ごしらえを全て済ませた状態にしたい。