アダージョ最終号。今回は諸々の事情で東京タワーが背景に入ることが条件である。そこから人選、特集場所が決まっていった。ところが東京タワー と縁がある人物というと、案外決定まで時間がかかった。22号の円谷英二は、本来東京タワー周辺が特集になった場合に、と考えたアイディアであった。最終号となる今号は、あまり地味でも具合が悪い。そこで東京タワー建設決定に係わったという田中角 栄に決まった。 想えばアダージョの表紙で毎号頭を悩ませたのは、名所とはいえない都営地下鉄駅周辺の風景に、いかに人物を配するか、ということに尽きる。今号も大門に角栄をただ立たせても、違和感だけが気になるだろう。そこで列島改造と“コンピ ューター付きブルドーザー”のイメージで、そのまんまブルドーザーを配することにした。中古の重機が置かれているという神奈川県の某所に撮影にでかけた。残念ながら排ガス規制により、角栄時代のブルドーザーはすでになかったが、あまりの台数に、当 初一台だけのつもりのブルドーザーを、ブルドーザー群として配することにした。暑がりの角栄には扇子を持たせることにして、実物を合成したのだが、せっかく作ったネクタイ周辺が隠れてしまった。角度や大きさ変えても無理であった。入稿寸前、角栄の手相が百握り、ますかけなどという、横に一本だけの天下を取るといわれている手相だと知り、なんとか修正。入稿後、着けるつもりの議員バッチを忘れていたのに気付く。すでに遅いがチェックしたら、ちょうどその辺りも扇子に隠れていた。 最終号は派 手に行きたい。青空を強調し、角栄お得意のポーズ。そうなるとブルドーザーが静かに置かれていては愛想がない。排気口から煙を出し、キャタピラには土埃を立てた。 結局ブルドーザーだらけで、肝心の大門は何処へいったか、東京タワーが取って付けた ように頭を出すという結果になった。編集長に伺いを立てると、インパクト重視で、とのこと。想えば、やりすぎることが多いと自覚している私は、この4年間、この言葉に随分助けられたものである。
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