明日できること今日はせず
人形作家・写真家 石塚公昭の身辺雑記
 



10月だと思っていたつげ義春展が前期に振り分けられ少々慌てたが、それはあいうえお順のために前期になったのであった。あいうえお順で得をしたことはない。小学生の時、注射をされる時など、最初の方に済ませ、皆の注視の中、痛そうな顔をして恐怖に陥れるのが楽しかったぐらいである。 今回、最近の手法で人間を撮影してみて、色々試したこともあり、実に収穫が多かった。これなら人物もいけるだろう。というよりさらに人物を撮ってみたくなった。 少々急ぎ過ぎな気もするが、ブログに書いて来たように、急ににできてしまった手法の為に、私自身がその正体を把握出来ず、早く知って、始めから計画通り、すべて判ってやっている、みたいな顔をしたいわけである。今後はさらに進めて、寒山と拾得が登場してもなんの違和感もない、くらいまで持って行きたい。 この絵みたいな手法はいったいなんだ、という目は、オイルプリント発表時にさんざん浴びたので、あまり気にしないでおく。手透き和紙のスキャニング画像をアップしておくが、このサイズでは判らないだろうが、明日からのつげ義春公認トリビュート展『拝啓つげ義春様』では女将の目つきも見ていただきたい。この手法に大変貢献している手漉き和紙は、モニターで見るのとはかなり印象は違うだろう。



※『拝啓つげ義春様』
 (前期)2017年9月30日(土)~10月15日(日)『ゲンセンカン主人』出品
 (後期)21017年10月21日(土)~11月5日(日)
ビリケンギャラリー
 住所:〒107-0062 東京都港区南青山5-17-6-101
 TEL:03-3400-2214
 営業時間:12:00 ~19:00(月曜休)
 ホームページ:http://www.billiken-shokai.co.jp/

※『タウン誌深川』“明日できること今日はせず”連載4回「哀しい背中」
※深川江戸資料館にて九代目市川團十郎像を展示中。11月12日まで。

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ことあるたびにいっていることだが、まことを写すという意味の写真、まったくふざけたネーミングをしてくれたものである。まことなどとは一切関わりたくもなく、もちろん扱いたくもない。なるべくフレームから排除するべく励んで来たが、立体を作り出せば当然そこに陰影が生まれ、それを描きたくなるのが人情というものである。実在した人を作れば、ついその人物が今でも生きているかのように描きたくなる。 今回原作は漫画である。人間で作中と同じポーズを試したら、人間の構造上無理であった。つまり花形満や矢吹丈の前髪、鉄腕アトムの角、さらにいえばクラナッハのヌードと同じで、作者は描きたいように描いておられる。川瀬巴水にしても自分の都合で世界はそう見えるかのように描いている。それを考えると写真は身も蓋もない。と思っていたが、もちろんカメラやレンズに責任があるわけではない. それならば、と永井荷風で試せなかった逆遠近法もなんとなく試せた。言わないと判らないかもしれないが、妙な違和感は感じてもらえるだろう。何もかもが不自然。そのおかげで障子から透けて見える斜線の風も、原作からいただいた、漫画そのままの障子に映る男の影も問題ない。結局不自然なら不自然、バランスの問題らしい。このまま乱歩いうところの“夜の夢こそまこと”に邁進していきたいものである。 田村写真で手漉き和紙にプリント。これによりモニター上での私の生々しい企みも、ぐっと落ち着いてくれる。そのままビリケン商会に搬入に向かう。この一連の手法を評価してくれていたが、これが今迄で一番良い、といってくれた。今迄で、というのがいつからのことかは聞かないでおいた。被写体が人形じゃない、というのが複雑ではあるが、頭の中のイメージを取り出すためには、どんな卑怯な手でも使うぜ、と昔からいっている。

※『拝啓つげ義春様』
 (前期)2017年9月30日(土)~10月15日(日)『ゲンセンカン主人』出品予定
 (後期)21017年10月21日(土)~11月5日(日)
ビリケンギャラリー
 住所:〒107-0062 東京都港区南青山5-17-6-101
 TEL:03-3400-2214
 営業時間:12:00 ~19:00(月曜休)
 ホームページ:http://www.billiken-shokai.co.jp/

※『タウン誌深川』“明日できること今日はせず”連載4回「哀しい背中」
※深川江戸資料館にて九代目市川團十郎像を展示中。11月12日まで。

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ブログは日を跨いで翌日に書くことが多い。夜中に『ゲンセンカン主人』が完成したが、その場合、すぐ合成画像を統合し、よけいなものは削除してしまうことが多い。しかし夜中は気分も違うし、予定より一日早く完成した。念のために、一眠りしてからでも遅くない。ラブレターは一晩寝てから投函すべしである。ブログを書いた後、寝ようと思ったが何か物足りない。つい先日まで雷鳴を背景に男はおかみが待つ部屋に現れる、と思い込んでいたので、その雷光がなくなったとなると、当然物足りないことになる。外はゴーゴーと風が鳴り、洗濯物が宙を舞っている状態である。そこで風を加えることにした。 原作ではそんな暴風なのに戸締まりはどうしているのか、男は障子を開けて、風とともに部屋に入って来る。室内は行灯一灯なのにそのわりに陰影がなく、行灯や煙草盆の遠近感は歪んで嘘臭く配置されている。いまさら斜線による風といっても違和感はない。ついこの間まで、風を線で描いてしまうことになるとは考えもしなかった。このまま行けば『寒山拾得図』もいけそうな気が増々してきた。 午後二時に美容関連雑誌の取材。不気味の谷について。現在我が家は坂口安吾と永井荷風が同棲しているかのような状態なので、古石場文化センターの一室を借りる。カラオケ大会に使われていそうな広い和室で、旅館みたいになりそうなので、緞帳の下がった舞台の上での取材となった。

※『拝啓つげ義春様』
 (前期)2017年9月30日(土)~10月15日(日)『ゲンセンカン主人』出品予定
 (後期)21017年10月21日(土)~11月5日(日)
ビリケンギャラリー
 住所:〒107-0062 東京都港区南青山5-17-6-101
 TEL:03-3400-2214
 営業時間:12:00 ~19:00(月曜休)
 ホームページ:http://www.billiken-shokai.co.jp/

※『タウン誌深川』“明日できること今日はせず”連載4回「哀しい背中」
※深川江戸資料館にて九代目市川團十郎像を展示中。11月12日まで。

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ゲンセンカンのおかみは寝化粧をし男を待つ。現れた男の背後では稲妻が光り、と思い込んでいたら、そんな物は光っていなかった。よってイメージを変更する。 以前、それがヌードであったこともあり、顔を別人に変えたことがある。今回は作中のゲンセンカンのおかみ風に。元の被写体の部品のみを使って加工するのだが、要領自体は粘土で制作している感覚に近く、多分、写真関係者のやり方とは違うだろう。人形制作者ならではの画像加工法があっても良い。イメージ通りにさえなれば行程はともかく。 私の作品はほとんどが縦位置であるが、今回は寝床のおかみが主役ということもあり、横位置にしてみた。もともと目を伏せていて目は開いていなかったのだが、途中で気が変わった。それも僅かなので、あまり小さいと目を瞑っている`ように見えるかもしれない、とおかみを大きめに配すことにした。最後に簪を3本さして完成。予定より一日早かった。すぐに画像を統合して終了としたいところだが、“ラブレターは一晩寝てから投函せよ”のことわざ(そんなものはない)の通り、朝まではこのままにしておくことにした。



※『拝啓つげ義春様』
 (前期)2017年9月30日(土)~10月15日(日)『ゲンセンカン主人』出品予定
 (後期)21017年10月21日(土)~11月5日(日)
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 営業時間:12:00 ~19:00(月曜休)
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※『タウン誌深川』“明日できること今日はせず”連載4回「哀しい背中」
※深川江戸資料館にて九代目市川團十郎像を展示中。11月12日まで。

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30日から始まるつげ義春トリビュート展だが、いつもなら近所の方々にも知らせるのだが、今回は写真1点だし、つげ義春を知らない人にとってはどういう場面か判らないし積極的にはお知らせしにくい。電話でそんな話を友人としていたら「お前の作品はみんなそうじゃねえか」。彼は時たま意味の良く判らないことを口にする。 『ゲンセンカン主人』。寂れた温泉宿を訪れた男。風呂に入ろうとして混浴を嫌う。しかし下働きの老婆に「早くはいってくれないと、わたしら寝ることもできませんがね。」入ると聾唖の宿のおかみが、湯船の脇に備えられた祭壇に向かって一心に拝んでいる。欲情した男は突然遅いかかかる。抵抗するおかみ。男は押さえつけながら手で、あるサインをしておかみに示す。それですべてを察したおかみは指で“へやで”と書いて風呂場を出て行く。これを読んだ日、私はあろうことか母の目の前にそのサインを突きつけ、これってなあに?と訊いた。掲載は68年、小学5年生であるからしかたがない。 どういうわけだが、そちら方面のことを大人に質問すると、何か微妙な空気が漂うのか、その時の場面を憶えている。お隣の家で姉妹が購読していると思しき雑誌に載ってる青春小説を読んでいて、おばちゃんにこれなんて読むの?接吻であった。そういえば父にはこれなんて読むの?それは性器であったが、父はデタラメを教えた。子供に噓教えていいのか?いずれにしても私が読んでいたのが、そんな字すら読めない子供が読む類いの物でないことだけは確かだったろう。

※『拝啓つげ義春様』
 (前期)2017年9月30日(土)~10月15日(日)『ゲンセンカン主人』出品予定
 (後期)21017年10月21日(土)~11月5日(日)
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 営業時間:12:00 ~19:00(月曜休)
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※『タウン誌深川』“明日できること今日はせず”連載4回「哀しい背中」
※深川江戸資料館にて九代目市川團十郎像を展示中。11月12日まで。

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目がさめて有明行灯に取りかかる。有明行灯は光量調節も可能で、なかなか粋な行灯である。寝るときはカバーをして光量を落として着けっ放しで寝る。当然、安価な魚から絞った油しか使えないような人達が使う物ではないだろう。臭くて消してとっとと寝るしかない。 昨日の煙草盆が初の試みであったが、二日目、行灯を逆遠近法にて制作。逆遠近法といえば、東京オリンピック当時、グラフ雑誌をむさぼり読んだが、陸上の選手が縦に連なった時、何故か後ろの選手が先頭の選手より大きく見えて、不思議でしょうがなかった。望遠レンズの効果であった。陰影を消したり薄くするくらいではイメージの世界と現実では、そう驚くほどの変化はない。しかしそこらに配されている物が現実と違って自ら積極的に歪んでいる訳であるから、もう周囲と馴染ませる云々という話しではないだろう。 『ゲンセンカン主人』は小学生以来、何回読んだか判らないが、大荒れの夜、男は稲光に照らされシルエットになっているとずっと思い込んでいたが、風が強いだけで、そんなものは光っていなかった。では何に照らされて?という話しだが、この期に及んでなに細かいこといってる、という話しである。 『ゲンセンカン主人』“へやで”


※『拝啓つげ義春様』
 (前期)2017年9月30日(土)~10月15日(日)『ゲンセンカン主人』出品予定
 (後期)21017年10月21日(土)~11月5日(日)
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 営業時間:12:00 ~19:00(月曜休)
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※『タウン誌深川』“明日できること今日はせず”連載4回「哀しい背中」
※深川江戸資料館にて九代目市川團十郎像を展示中。11月12日まで。

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陰影の次は東洋或は日本古来の遠近法を取り入れ次は時間の表現を、と漠然と考えていた。永井荷風の周囲に配した七輪その他で遠近法を試すつもりでいたが、そう簡単ではなかった。しかし西洋人のバルチュスがかつて日本的遠近法によって描いていたことを知ってどうにも我慢ができない。まずは女を完成しK越屋へ。 飲酒の時間でも取らないと制作しっぱなしになってしまう。K越屋のオヤジも丸善に観に来てくれたという。相変わらすとりとめもなく。帰り際、今拓哉さんを迎えに岩崎宏美さん登場で色めき立つK越屋一家。今日も宏美さんは母のことを気遣ってくれていた。帰宅後制作再開。女には行灯、鏡、箱枕、煙草盆を置く。箱枕はさすがに古く、中のそば殻が出て来てしまうのでT屋のお米ことかみさんに縫ってもらった。小学校の家庭科2の私には無理。近所のビジネスホテルは中国資本になり中国人が押し寄せている。夜中の三時まで外で騒いでおり近所に養鶏場の如し。鏡と枕の撮影を残し終了。明日は某所にて最後の撮影の予定。本日のサービスカット。

※『拝啓つげ義春様』
 (前期)2017年9月30日(土)~10月15日(日)『ゲンセンカン主人』出品予定
 (後期)21017年10月21日(土)~11月5日(日)
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※深川江戸資料館にて九代目市川團十郎像を展示中。11月12日まで。

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池袋で用事を済ませ相撲観戦を誘っていただいたMさんと両国へ。2階席の前の方で、館内全体が観察でき、土俵自体も見やすい良いポジションであった。その後Mさんより小笠原旅行の土産話を聞く。小笠原には生の亀を寿司にした亀寿司があるそうで、癖も無く美味であったそうである。これは食べてみたい。 帰宅後制作の続き。『ゲンセンカン主人』。小学生であるから当然ではあるが。初めて観た衝撃作であった。出品の話しをいただいた時、2、3の作品が浮んだが、当時の衝撃の大きさからこれを選んだ。実をいうと私の作家シリーズはほとんどが高校までの読書体験から発想しており、大人になってから読んだ作家は案外少ない。そう考えると漫画では第一級の衝撃であった。 旅人が田舎の寂れた宿で聾唖の女主人と出会う。この作品は作者と思しき男が出てくるので、作者を作中に登場させる、いつもの手法を取りやすくはあったが、制作時間のこともあったが、なんといっても本作は女主人である。例によって女性は実物を撮影した。今回改めて読んでみたら、あると思っていたカットがない。頭の中で作っていた。現場で試しに作中と同じポーズをしてもらった、何気ないポーズであったが、人体の構造的にそうならないことを知って軽いショック。やられた。私の写真もそうありたいものである。私としてはこの女主人を、できるだけ原作に近づけたいと考えている。

※『拝啓つげ義春様』
 (前期)2017年9月30日(土)~10月15日(日)
 (後期)21017年10月21日(土)~11月5日(日)
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昨日のブログで、私が13歳で谷崎やヘンリー・ミラーを読んでいたことになり、確かに幼い頃から読書好きではあった。だがしかし、ここで正直にいうこともないが、単に手の届く範囲でのエロを探索した結果にすぎない。拙著にも書いたが、教科書にも乗っている作家だからと授業中にも谷崎を読んでいたが、教師に見つかり、読んでいた『卍』を急遽朗読させられた。関西弁に対する嫌悪感はこの日に始まり、収まるには漫才ブームを待たねばなならなかった。動機きっかけはともかく、後に谷崎を作ることになったのだから無駄ではなかったろう。 ところでそのまた数年前の小学生の時の話しである。書店で漫画本を選んでいた時、大人向け漫画本『ガロ』をめくっていて、白土三平の『カムイ伝』のくノ一が殿様をかどわかすシーンのリアルに釘付け。『ハレンチ学園』とはレベルが違う。『カムイ伝』をエロ本扱いとは失礼な話しだが、結果つげ義春と佐々木マキにはまってしまった。おかげで一連の名作をガロ誌上で堪能したことになる。 やたらと長いフリとなったが、今月30日から、南青山ビリケン商会にて『拝啓つげ義春様』というトリビュート展が始まる。前期、後期と様々な作家が様々なアプローチでつげ義春の世界を描くことになるだろう。私は前期となるが、当時土俗的エロテイシズムに目眩がした『ゲンセンカン主人』の1場面を写真作品で、と考えている。動機きっかけはともかく。こうして参加できるのだから無駄ではなかったろう。

※『拝啓つげ義春様』
 (前期)2017年9月30日(土)~10月15日(日)
 (後期)21017年10月21日(土)~11月5日(日)
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 営業時間:12:00 ~19:00(月曜休)
 ホームページ:http://www.billiken-shokai.co.jp/

※『タウン誌深川』“明日できること今日はせず”連載4回「哀しい背中」
※深川江戸資料館にて九代目市川團十郎像を展示中。11月12日まで。。

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私が中学生の頃、まだフランス映画にも勢いがあり、男優では育ちが悪いのに綺麗に生まれてしまった感じが魅力のアラン・ドロン。女優ではカトリーヌ・ドヌーブのファンであった。3本立て150円で毎週のように映画を観ていたが、客席は一杯であった。ドヌーブが上半身を一瞬はだけるシーンをもう一度観るため3本立てをもう一回観るという、ビデオなどない時代の中学生の執念には我ながら呆れる。 中学一年で観た作品でドヌーブ主演、フランス・イタリア合作映画、ルイス・ブニュエル監督作品『昼顔』(1967)がある。貞淑な妻が、昼間だけ売春婦になる、という話しで、映画の1シーンが表紙に使われた文庫本まで読んだ。映画では東洋人の客が、ドヌーブに意味あり気に小箱を開けて見せ部屋に消える。というシーンがあるのだが、当時、あれは何が入っていたんだ、と一部同級生と話しになった。大方が大人の玩具的なものだろう、という中で、一人虫じゃないか、という奴がいて、他の連中は何を馬鹿なと笑ったが、私はレベルの違う、何かいいようのないものを感じ、敬意を表して谷崎潤一郎やヘンリー・ミラーの文庫本を貸したが、読みもせず返して来た。どうやら私の買いかぶりだったようで、今思うと小箱に虫は、単に昆虫採集的発想だったらしい。そんな話しを2009年8月22日のブログにも書いている。 昔それを私から聞いたのを憶えていた人から『昼顔』の40年後を描いた『夜顔(2006)というマノエル・デ・オリヴェイラという監督の続編を観たと電話を貰った。そこにもまた小箱を開けるシーンがあったそうだが、開けた時「ブーン」という“羽音”が聴こえたという。

※『タウン誌深川』“明日できること今日はせず”連載4回「哀しい背中」
※深川江戸資料館にて九代目市川團十郎像を展示中。11月12日まで。

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随分前から、制作してきた人物を、ビートルズのサージャントペパーズのジャケットのように1画面に並べてみたいと思っていた。そのためには全員に同じ方向からの光が当たっていないと馴染まないので、昨年の江戸深川資料館の個展は、ある物を出来るだけ出品したので、良い機会だ、と思ってブログでも書いたような気もするが、すっかり忘れてしまった。これでこの企画は諦めていたのだが、最近始めた手法にはそもそも陰影がないので、照明の向きなど気にする必要がない。今のところ幽霊の人物二人を含めたとしても10カットしかないが、とりあえず無地で良いので背景を用意しておいて、今後この手法で撮影するたび、人物のデータだけ、そちらに置いていけば良い。今回の永井荷風は端の方で七輪を扇ぐことになるだろうから、七輪ごと保存しておいて、今年はサンマがダメだったので鍋にしたが、その際はサンマに置き換えても良い。人と人の間から顔を出す分には何もさせなくても良いけれど。

みそろぎ人形展9月13日(水)〜19日(火)丸善丸の内本店4Fギャラリー (出品写真作品)三遊亭圓朝×3/泉鏡花/三島由紀夫/夏目漱石/永井荷風最終日は4時まで。

※『タウン誌深川』“明日できること今日はせず”連載4回「哀しい背中」
※深川江戸資料館にて九代目市川團十郎像を展示中。11月12日まで。

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先日、写真とエッセイを連載している(横着してタイトルは明日できること今日はせず。)『タウン誌深川』編集部から連絡があり、美容雑誌から取材したいと連絡があったという、その時は深川を見て、と聞いたので耳を疑った。今号に書いたのは、工場に住み込み溶接工をしながら人形を作っていた20代の時、工場内の簡易トイレをかってに使っている人間がいる。とっちめてやろうと、ある朝トイレを棒でぶん殴ってコラーッとドアを開けたら、想定外の作業着の巨体が尻を出していて、その背中が発する哀し味に打たれてドアを閉めた、なんて話しである。どこをどうやって美容雑誌が、と思ったのだが、連絡をいただいてみると旧知の能面師から聞いたそうである。来週回復予定だが、HPは現在消えてしまっているし、そのメールアドレスは3年も前の物であった。これではしょうがない。取材内容はというと、人形制作における不気味の谷"についてだそうで、丁度一年前ブログで触れていたことであり、ヒトガタを作る私には興味深いテーマである。

みそろぎ人形展9月13日(水)〜19日(火)丸善丸の内本店4Fギャラリー (出品写真作品)三遊亭圓朝×3/泉鏡花/三島由紀夫/夏目漱石/永井荷風
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※深川江戸資料館にて九代目市川團十郎像を展示中。11月12日まで。

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今回はいつも連れて来ている母がホームにおり、当分出歩くのは無理なので内緒である。母は元々新聞を見て予約し、宏美さんのコンサートに一人で出かけていた。それにしても毎回感心するのは変わらぬ歌声である。維持するのは並大抵ではないだろう。先日ユーチューブで昔の懐かしの歌謡番組を観たら、ベテランの中で十代の宏美さんが一番上手かった。デビュー時のレベルの高さのせいで、未だに変わらぬように聴こえるのであろう。 ところで私にトラウマがあるとしたら幼稚園で木馬座を観に行き、終演後、舞台から降りて来た着ぐるみの狼君に私は頭を撫でられ狼君と母が慌てるくらい大泣きしたそうである。そのせいで寺山修司の舞台など見向きもせず、浅草の演芸場やソウルショーでも縁者が舞台から降りて来て話しかけられるのに恐れを感じてしまうのである。TVから貞子が這い出して来るなどもっての他である。ところが本日、宏美さんがマイクを持って客席に降りて来た。貞子でなく岩崎宏美だというのに私の胃袋はフリッツ・フォン・エリックに鷲掴みにされたが如し。それは宏美さんが無事舞台に戻るまで続いた。そういえば、その前は、ご主人の今拓哉さんの芝居を観にいった時。侍姿の今さんが客席に降りて来て慌てたが、その時は客がいない体の設定であったので事なきを得た。 それが終演後、別の通路から宏美さんがファンと言葉を交わしたり記念写真を撮ったり、それはまったく大違いで、宏美さんには母へ気遣いの言葉までいただいてしまった。トラウマとはかくの如きものなのである。

みそろぎ人形展9月13日(水)〜19日(火)丸善丸の内本店4Fギャラリー (出品写真作品)三遊亭圓朝×3/泉鏡花/三島由紀夫/夏目漱石/永井荷風
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虚実の狭間でじたばたしている今日この頃であるが、のんびりどうしようかな、などといっていられない状態にある。ある漫画家のオマージュ展的なグループ展が今月30日から始まる。私は10月と聞いていたのだが、前期後期と分かれており、蓋を開けたら前期に振り分けられており初日が30日からだという。 その漫画家の作品はたまたま私は小学生の頃に一連の名作を読んでいた。それもどうか、と思うのだが、そこで浮んだのが小学5、6年で衝撃を受けたある作品の、半裸の女性が登場する場面なのだが、問題は対象としている作品自体が虚実の狭間を描いており、さらによりによってその作家の作品が、コントラストの強い陰影が特徴的な画風なのである。これが今年の前半であれば、喜んで陰影深い画風に相応しい絵を制作したことであろう。ところがまさによりによって、ということなのである。ただでさえ、今の所人形ではない、人間を撮影する場合の対処法がみつかっていない。一度試してみたものの、幽霊だったので参考にならない。 小学生の頃、星飛雄馬は誰かにちょっと打たれただけで、何故大リーグボール1号〜3号を投げ分けないのだ、と思ったものだが、スポ根漫画はそうでないと面白くない。私の作品はスポ根ではないし、川瀬巴水のように手持ちの球種を状況によって投げ分け、上手く立ち回れよ。と頭では思っているのだが。

みそろぎ人形展9月13日(水)〜19日(火)丸善丸の内本店4Fギャラリー (出品写真作品)三遊亭圓朝×3/泉鏡花/三島由紀夫/夏目漱石/永井荷風
※『タウン誌深川』“明日できること今日はせず”連載4回「哀しい背中」
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塩浜の倉庫から夏目漱石、泉鏡花、永井荷風、三島由紀夫を出して来て撮影を始めてそう日が経っていないから、私にしては新作4点はかなりハイスピードで完成したことになる。しかし今思うとそれ以前の円朝三部作のうち、悩みに悩んだ寄席の前の円朝に寄席から漏れる灯りを当てるべきではなかった。まだ“この世とあの世の狭間”で躊躇していた。川瀬巴水など矛盾を回避するため風景と人物を別々に分けていた。風景の中の人物はあくまで豆粒のように景色の一部として扱い、人物を大きく描く時はいつも室内である。さすがに巴水の時代になると、なんでも有り、というわけにはいかなくなっていて、矛盾を回避する工夫をしない訳にはいかなかったろう。しかしルールブックはあくまで私というわけか、ちょっとずるい気もするが、私は作ることになると馬鹿正直すぎる。巴水が乗り越えていないのだから最近始めた私には到底無理である。まあ圓朝どかして円朝が牡丹灯籠を口演中の看板を掲げる寄席の前を幽霊のお露とお米を歩かせて良かったろう。 今回夏目漱石ではほぼ無地の背景にしたこともあるが、あちらの世界に収まってくれた。さて荷風である。実はこの時、日本的遠近法で火鉢や煙草盆を配するという実験をするつもりでいたのだが、この世のルールから脱することはできなかった。発表2日にしてすでに反省しているようだが、私にはすべて満足できる作品、記念すべき作品である。この連中が礎となり、今後永遠に語り継がれて行くことであろう、(私のブログ内で。)



みそろぎ人形展9月13日(水)〜19日(火)丸善丸の内本店4Fギャラリー (出品写真作品)三遊亭圓朝×3/泉鏡花/三島由紀夫/夏目漱石/永井荷風
※『タウン誌深川』“明日できること今日はせず”連載4回「哀しい背中」
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