制作の合間に傍らに置いたグヤトーンLG-80Tを弾く。見た目は玩具のようなギターだが、私の所有するギターの中では一番音が良い。ちゃんと調節して大事に使いたい。今は吸わないが、煙草を吸うくらいの頻度であろうか、VOXの電池式の小さくて手軽なアンプをギターに直接さして音はヘッドフォンで聴いている。ギターに関しては探究心が乏しく、ゆえに上達しない。煙草を一、二本吸い終わるくらいで、やることがなくなりまた制作に戻る。私の場合は集中しすぎて客観性が失われる傾向があるので、間を取ることが必用なのである。
配布中の徳川慶喜は水戸藩の出である。尊皇攘夷思想を全国に広めた中心人物は九代藩主の斉昭と学者の藤田東湖だが、安政の大獄で斉昭が井伊直弼と対立し処罰を受け、水戸藩内が分裂し、斉昭を支持する尊皇攘夷の改革派が過激集団『天狗党』となる。慶喜を担いで朝廷に尊皇攘夷を訴えるため、幕府軍や諸藩の追っ手と戦いながら京都の慶喜のもとへ向かう。最後は加賀で降伏することになるが、彼らを不穏分子として捕縛させたのが当時禁裏守護職にあった慶喜である。晩年、あれはどうせ助けられなかった、といっていたようである。そして天狗党は400人近くが斬首された。藤田東湖の子、藤田小四郎とともに天狗党三総裁の一人だったTも処刑さたが、中学生の時、納屋に捨ててあったボロボロのLG-80Tをもらった父方の親戚はTの直系の子孫だと聞いている。歴史といったって、そう昔のことではない。慶喜を作りながら、たまに奇妙な気分になった。
過去の雑記
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