先日ある女性写真家が展示してある永井荷風を見て、初期の手法が良い、最近の手法だ以前に、「やっぱり人形が良い」。などと今さら身も蓋もないことをいったが、大リーガーの大谷翔平を見て、そういえば私も二刀流だったな、と最近思うのだが、制作にじっとり時間がかかる人形制作と、息を止め次々シャッターを切る撮影のリズムは、丁度良いバランスだ、とかつていっていたものである。であるから両方やってこそ自分のリズムが取れるという大谷のことは私なりに良く判る。 本日は台風で延期になった山前譲さん×平井憲太郎さんトークショーである。時間前に控え室で挨拶をしていると、今日は客席から拝聴するつもりが、私も取り敢えず前にいろ、と数分前にいわれた。お二人のお話を聴きに来た方々に邪魔にならないようしていたが、憲太郎さんの横にいて、以前河出書房新社、文藝別冊江戸川乱歩特集に短文を寄せたことを思い出した。短いので転載してみる。『土蔵の悪夢』 乱歩邸土蔵内で乱歩の人形を撮影した事がある。乱歩はあまりの寒さに書斎としての使用を断念したそうだが、実際、足元から寒さが沁みてきて翌日風邪をひいてしまった。乱歩の長男、平井隆太郎先生とは何度かお会いしていたので、人形の乱歩と並んで親子共演も撮影させていただいた。実はその際ピストルをかまえていただき、二探偵図としたかったのだが最後まで言い出せず、前日入手していたリボルバーはポケットの中であった。私の乱歩体験は御多分にもれず小学生時代の少年探偵団シリーズから始ったわけだが、土蔵の内部は探偵団ゴッコをするには最適であろうし、イタズラをして罰に閉じ込められるには効果絶大であろう。蔵書に圧倒されながらも土蔵内ではそんな事を空想していた。そのせいか後日、立教大学の学長室で関係者に詰め寄られ小突かれている夢を見た。土蔵内の貴重な文献すべてが、私が子供の頃にした悪戯描きだらけだったという悪夢であった。』 私は小学校入学したその日から高校最後の授業まで、遠足、運動会、文化祭、修学旅行を別にすれば、一日も欠かさず悪戯描きを続けたのは間違いがない。
石塚公昭幻想写真展-生き続ける作家たち- 2018年7月25日(水)~9月2日(日)(火休)
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本日25日発行
※『タウン誌深川』“明日できること今日はせず”連載10回『劇場の永井荷風』
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