明日できること今日はせず
人形作家・写真家 石塚公昭の身辺雑記
 

眼鏡  


私が眼鏡を壊すのは、酒を呑んで、かけっ放しで寝てしまい、目が覚めたらレンズがはずれたり、歪んだフレームが枕元に転がっている、という場合がほとんどである。目覚めの第一歩で踏みつぶす、ということもある。私が愛用するのはブロータイプという、上部が硬質ゴムやプラスティック、セルロイドで、下部が金属という、江戸川乱歩タイプのフレームであるが、先日、一番気に入っていた、1950年代製アメリカはボシュロムのフレームを壊してしまった。 他の2つも、残りの3大メーカー、アメリカンオプチカルとシューロンだが、マルコムXと同じ眼鏡だと喜んでいたら、北爆のジョンソン大統領が同じものをかけている写真を見つけてガッカリ。ようするに、向うでは何処にでもあった眼鏡というわけである。 来月、毎年恒例で、妹が子供たちを連れてアメリカから帰ってくる。そこでついでに眼鏡を買ってきてくれるよう頼んだ。サイズは確認済みだが、アメリカ人のスカスカのわりに小ぶりな頭と違い、私の物は高性能HDD、メモリーも大容量格納する必要から大きめの函体なので、その点を考慮して選んだのはいうまでもない。

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完成  


アダージョ次号用の作品は、実在の人物と人物像を、ほとんど横に並べたのだが、ただでさえ質感が違うのに、人物像が上半身裸である。二度とこんなことはすまい、と誓う私であった。おかげで何度か撮りなおすことになった。 前回の志ん生がリアルなら、今回のテーマは人間との共演である。共演をお願いした人物が当初スケジュールの都合上、無理だということで、他に匹敵する人物をシュミレートしてみたが、ファーストインプレッションというものはたいしたもので、誰をあてがっても画にならない。現在旬な人物を並べることで、私が制作した人物が生き返ることをイメージしたのだが、あきらめて、その日ロケ場所にいる人物でいこうとしたら、本人が現れたというわけである。撮影できたのは5分足らずだったのではないだろうか。私の頼みで、いずれここに立つであろう人物の後頭部あたり、つまり虚空を見つめてくれるようお願いしたのだが、ファインダーでは判らなかったが、現像してみたら、ちゃんと演技をしてくれていた。

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ズボン状のものを穿いた人物。上半身は裸のままにした。本日完成だと思ったが、手にはめたグローブを、ブルース・リーが考えたらしい、総合格闘技で使うオープンフィンガータイプの物に換えたりしていて時間がかかってしまう。ここで急いでもしかたがない。仕上げに時間をかけ、完成は明日に。それにしても私はいったいナニを作っているのであろうか。友人にも、話だけでは通じなさそうである。作っている私は、とても楽しいのだが。

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本日、トランクス一丁の人物、完成一歩手前で引っかかる。どうも格好が悪い。たしかに、こんな人物だと思うので、私の責任ではない、といいたいところなのだが。しかし、トランクス一丁にしたのは、私の責任である。せっかく、数日かけて作った脚が隠れてしまうのは残念だが、ズボン状の物を穿かせることにした。結果は、穿かせて正解。あきらかにカッコが良くなった。 これは次号のアダージョ用人物である。トランクス一丁とは、スポーツ選手なのか?今号が楽器を背負った人物なのに、ミュージシャンではなかったように、スポーツ選手ではない。明日はいよいよ仕上げに着彩。スムーズにいけば撮影までも。

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一日  


制作中の人物を乾燥機につっこんでいる間に、朝昼兼ねた食事をとろうとT屋に行く。目鼻がついたし、数時間は乾燥を続けたいと思っていたので、こんな日もあって良いだろうと飲み始める。よい感じに仕上がってきているので美味しいが、ご主人のHさんと話しているうち3時半になってしまう。Hさん、もう一杯飲んで、4時開店のK本に行ったらなどと、グッドアイディアを口にするが、それをやっては一日がお終いである。家に帰って集中して制作を続ける。 現在半裸の男を作っているが、筋肉の様子など、だいたい頭に入っているので、ある程度の参考資料は用意するが、ほとんど想像で制作している。ところが、どうも腕の筋肉のひねり具合が心配になってきた。そこで、いつも半袖Tシャツ一枚の男を思い出した。11時過ぎに、人形をザックにいれ、再びT屋へ。さっそくHさんに腕をまくってもらい、同じポーズをとってもらうと、やはり少々違っていた。了解。来て良かったよ。さあ、祝杯をあげよう。数時間後、Hさん、ろれつが回らなくなったところで、別の店に行こうという。こんな状態の男を、一人にしておくわけにはいかない。というわけなのである。

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10年ぶりくらいの知人から電話をもらう。何の役にも立たない私の特技に、親しくしたことのある人物なら、始めの「もしもし」で、相手が判るというのがある。自動的に顔が浮かぶのだが、苦手が何人かいるものの、今回も10年ぶりでも、すぐわかった。もっともいきなり「よお、久しぶり」といったところで、相手は誰かと間違えていると思うのがオチであり、彼にも、これは私の特技なんだと説明したが、間違えた照れ隠しに、いい加減なことをいっていると思ったようである。 記憶力にはまったく自信がないが、人間に関する情報、特に形に関してはよく覚えているようである。子供の頃も、シルエットクイズが得意であった。昔東京駅で、電車が走り出したとき、反対側ホームの人の列に、一瞬見えた男のイメージを、何かのおりに使ってやろうと、未だに思っているくらいである。私に犯罪現場を目撃された犯人は、かなり困ったことになるに違いない。そのかわり、私に車のナンバーを訊かれても無駄である。ナンバーをじっと見つめていたそうじゃないか、と警察にいわれても、面目ないと頭を搔くしかない。

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私は人形の背景に好んで人物を入れる。それは風景の一部としてである。しかし、たとえばエリック・クラプトンが、私の作った伝説のブルースマン、ロバート・ジョンソンと、二人で十字路で悪魔を待ちたいというなら、それは可能である。ジョンソンと、肩を組みたいと我がままをいうなら、サービスしてあげてもよい。しかし、そんなことを着想する人もいないので、次号のアダージョでは、一つそれをやってみようと考えた。そこである有名人に登場をお願いしてみたが、スケジュールの都合で無理ということである。今を生きるこの人物が、私の作った人物像に、化学変化を起こしてくれるのでは、と期待したのだが。ところが本日現場に行ってみたら、本人登場で唖然。 私にとって写真を撮るという行為は、人形という、作るには嫌になるくらい時間がかかり、できてみるとジッとしているものに、予想を超えた何かを起こさせるものである。ハプニングは大歓迎。 こんな日は酒が効き過ぎるものである。撮影は数分間であったが、あの人物の発するエネルギーにあたったのは間違いない。

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浅草  


夕方、浅草のアンジェラスで待ち合わせた、コクトー研究家Fさんと、練習帰りだというサンボマスターの山口隆さん。ありえない組み合わせである。煮込み屋のある通りに行くと休業が多く、TVで競馬を流している店へ入る。隣の客は、すぐ山口さんに気がついていた。会話は文学の話から、多方面に及んだが、山口さんはイメージ通り、好奇心の塊のような青年で、あらゆるものを吸収しまくっているようである。考えてみると、私は、人のやっていることに対しての興味は薄れてしまっている。 次に、先客がいたことがなく、後から入ってきたこともない、私のとっておきのバーへ向かう。恒例のジャズのアナログレコードをかけてもらう。モダンジャズにはついていけない、というマスターなので、スゥイングジャズが中心である。お二人とも楽しそうで良かったが、誤算は二人とも下戸だ、ということであり、私一人、ホワイトのソーダ割りで間をつなぐ。マスターの娘らしき人が入ってきて、客がいるので驚いた様子。 自分の中に何があって、いかにそれを引っ張り出すかにしか興味がなくなってしまった私だが、そんなことでいいのか?いや、ここに至っては、もう、いいんじゃないの?と少々考えさせられた一夜であった。しかし、浅草に3人で出掛け、飲んでいるのは私一人というのは非常に具合が悪い。木場に帰って、はじめて入った店で一人飲みなおす。

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次号のアダージョの背景にと、考えていた場所にようやく許可が出て、編集長とロケハンに出掛ける。 私は一番苦労する頭部も出来て、これから全身を作るというとき、はやる気持ちをを焦らし、わざと作り惜しみをして、自分を盛り上げる事がある。しかし今回はロケ場所が決まらなかったせいで、自動的に、そういうことになってしまった。わざとやっているときと違って、締め切りも迫り、ハラハラ感は倍増である。そして本日、実際に現場を目にして、特集される人物のポーズ、その他が一気に決まった。もう抑えるものは何もない。家に帰って作るだけである。私はついに頭上に満月が輝いた狼男の如くであり、獲物にむしゃぶりつくように粘土に飛びかかるのだ。“オレの邪魔する奴は誰でも噛み殺すぜ。それがたとえオレのお袋でもな!”これは力道山と死闘を演じた往年のプロレスラー、“噛み付き魔”フレッド・ブラッシーの台詞である。当時、単細胞のアメリカ人プロレスファンを恐怖させたのだろうが、子供の私には、近所の馬鹿息子じゃあるまいし、いい大人がお袋に噛みつくってどういうことかと、怖さが伝わってこなかった。

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できるだけ誰も思いつかないような画を作りたい私が、たとえば『チャップリンと日本橋を歩く』というような、誰も思いつかないような?お題をいただいて表紙を制作しているのが 中央公論Adagioである。次号の特集人物は、街にただ佇ませても、さっぱり面白くない人物である。(と私は思う)おまけに特集される街が、その人物の家があるというだけで、邸内での撮影ならともかくピンとこない。仮に邸内で撮影できるとしても、生前何人ものカメラマンが撮影しているので、いまさら本人像まで作って、そんなものをなぞる気はない。 一つアイディアを思いついたのだが、撮影したい場所ができたばかりということもあり、いまだにロケハンの許可を求めている状態である。1カットのために場所を決めてから、それにあわせた造形をするという面倒なことをするので、時間が大分なくなってきている。 そもそもフリーペーパーというもの、通勤の数駅の間に読み終え、駅構内のゴミ箱へ捨てるものだ、という人も多いだろう。友人の中には、フリーペーパーなのに、やりすぎて、表紙がうっとおしいという人もいるのではないか、という意見もある。私としては捨てるにしても帰宅後にしてほしいし、地下鉄を利用しない家族にも読んでもらいたい。さらに、できることなら保存してほしい。となると、そうあっさりとするわけにもいかず、できればすくなくとも数秒間は、凝視せずにいられない表紙にしたいのである。そのために、いまだにロケハンの許可を待ち、ハラハラしているというわけである。

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GW 2  


川口から荒川サイクリングロードを、25キロ乗ってくるKと釣りに出掛ける。若洲は家族連れが多いだろうと月島方面に向かう。途中、相生橋で何年ぶりかのルアー。竿とルアーの相性まで考えていなかったので、今日はリハビリをテーマにする。時間的に脈はないので豊海埠頭へ。ここは夜景が綺麗で、ドラマでも度々ラブシーンに使われるが、後ろは昼夜問わずトラックが出入りしている冷凍倉庫で、殺伐としている。しばらくのんびりしたが魚の反応もなく、隅田川へ。朝ドラの『瞳』に良く出てくる風景。それにしても下町というと、なぜあんな連中ばかり出てくるのであろう。恥ずかしくて観る気になれない。西田敏行は、口が下町以前に東京ですらない。 昭和30年代の隅田川というのは、巨大なドブであった。その後劇的に綺麗になったが、それでも石鹸水の中に、魚を漬けたような生臭さがあった。しかし、久しぶりで釣り糸を垂らしてみて、さらに臭いは薄らいできているように感じた。

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GW  


午前中Hより電話。会社に置いてある水槽を縮小するので、これからフラワーホーンのメスを持っていくという。話は聞いていたが、今日とは聞いていない。そのあと連休で出掛けるというが、私が留守にしていたらどうするつもりだったのか。あわてて準備をする。ひさしぶりに水槽内にはオスメスのペア。 K本は6日まで休みなのだが、退屈した階下のフリーの映画プロデューサーYさんが頼んで、本日ちょっと開けてもらうことに。他に大手建設会社部長のMさんと私。店に入ると、店が開いてると思われたら困る、カーテンを閉めるYさん。アンネ・フランクの如し。Yさんには、K本店内撮影時に照明を手伝ってもらったこともあり、酒の肴にと、火焔太鼓を背負ったままの志ん生を連れて行き、カウンターの上に置いて披露する。いつもは仕事中、絶対椅子に座らない女将さんには、椅子に座ってもらい、ひとしきり呑んだ。 解散のあと、少々呑み足りないので、私だけK越屋へ。先月東京に出てきたという、近所の物産店の店長。店の若い男と二人で呑んでいたが、聞きたくもない仕事の話をずっとされて閉口する。私は日本人というもの、少なくとも8歳までは、強制的にギュウギュウに狭いところで暮らさせ、人との適切な距離感覚を学ばせるべきだと考えている。“江戸しぐさ”など馬鹿々しい話で、物理的にそうせざるをえない。

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一日  


薄井憲二先生より、バレエをテーマにした陶製人形の写真集を、これは私が持っていたほうが、と送っていただく。前回お会いしたとき、次はロシアバレエで2回目の個展をやります。などとほざいていた私である。そのときは、まさか志ん生を作っているとは爪の先ほど考えていなかった。恐縮する。そういえば某噺家が志ん生を襲名するという噂がある。志ん生を喜んで襲名する哺乳類がいるとは思えないのだが。 昼食をとろうと出掛けると、工務店のSさん。釣りでも行こうと電話しようと思ってたんだという。連休中、70過ぎの爺さんと釣りに出掛けるのも一興か?おそらく釣れないが。 昼食にT屋に行くと、K本の常連が、行く所がなくて夕方以降集まってくるという。夕方行ってみると、先日のアド街ック天国の撮影時に、映らないよう逃げてしまった常連がそのままズラリ。

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