中央公論アダージョ用の撮影で、ようやく撮影許可が下りた都内某博物館へ。私は思いついたイメージに基づき、あそこでこうしたいと言うだけだが、交渉は難航したらしい。ありがたいことである。閉館後の静まり返った中でシャッター音だけが響く。閉館後の博物館に閉じこもりたいというのは私の夢であったが。 アダージョは当初、制作した人物像を特集される場所へもっていき、ただ撮ることを考えていた。過去の人物を、あえて現代の風景に持ってきて、それはそれで面白い場合もあるが、その場に立たせるだけでは、連作の中の一作ならともかく、表紙としての説得力に欠ける。特に今回の人物は、一般的には、東京にそれほど深いかかわりのあるイメージが無いので、その分、印象的な状況を作っていかないとならない。今回は創刊号の江戸川乱歩に続き、実景を一切使わない予定だが、地味に生きることを、わざわざテーマにしているような人物を、生身の人間ならありえないシチュエーションに引っ張り出し、いかにカッコよく見せるか、と考えている。顎を上げるな、という教えを守り続けるボクサーのようにウツムキ加減の人物に、あえて空を見上げさせる予定である。 肝心の頭部はすでにできている。これで安心して胴体制作に突入である。
過去の雑記
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