Mさんの父上の写真は無事カラー化に成功した。某省の超がつくエリートだったそうだが、私の生まれた翌月に亡くなっており、時代的にカラー写真は一枚もない。初めてなので随分時間がかかったが、やればできるものである。 亡くなった時代に大きく差があり、カラーの母上にモノクロの父上、単独で見る分にはモノクロ写真は味があるが、スタジオで撮られた大判のカラーと、小さなプリントから複写されたモノクロでは、2枚並べると画質、情報量ともにどうしてもモノクロが見劣りする。そこで、できるだけ違和感を少なくするため母上のスタジオ撮影の背景を流用し、2カット並べて御夫妻がぴったりになるよう作った。この写真は今後Mさんの家族兄弟縁者が日々眺め続けていくわけで、これならば喜んでいただけるのではないか。 私の父が亡くなった時は、カメラに向かって笑っている写真がないので探すのに苦労したそうである。そしてバカ高い料金を取るわりにどうしようもない雑なプリントであった。そうした物なのかもしれないが背景のブルーが寒々しいので早々に処分させ、暖かい赤い夕日を背にした写真を作った。 世田谷文学館に展示する柳田國男の写真作品は着物姿に杖というおなじみの格好だが、展示する人形は『貝の穴に河童の居る事』で作った禰宜姿にすることにした。柳田の衣冠束帯姿の写真が残されているが、白装束の神官姿もなかなか味がある。作中では鎮守の杜の姫神様の後見人のような役所であり、異界に属する存在なので、トレードマークの丸眼鏡は合わないので止めた。そう思うと鼻の下の髭も横町の御隠居風なので、聖徳太子のような髭にすることも考えたが、この髭はあまりに柳田的なので、そのままにした。この翁が履くのが足半(あしなか)とい踵の部分がない草鞋で、現代の健康サンダルのようだが、丸眼鏡を着けるか、普通の草鞋にするかはまだ決めていない。
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