オイルプリントは祈ることが必要と書いたが、その気持ちが左右し、案外比喩でもない。インクを着けるのも剥がすのも、ブラシで叩くのは同じである。おそらく高速度撮影でもしない限り、見ていても違いが判らないだろう。着けようと思って叩くのと、剥がそうと思って叩くのでは、手先の神経に微妙に伝わるものである。これは丁度コックリさんが動いて欲しい、と思うことが微妙に指先に伝わる、ということに似ているかもしれない。できるようになってみると、テキストでは表現はなかなか難しく、過去に文献のみで再現に挑んだ難しさを改めて感じる。 その代わり知らない分、独自の手法となり、初めてネットの動画でブロムオイルの老作家が大きな剛毛ブラシを逆手に持ち、乱暴に叩いているのを見て仰天した。モノクロ印画紙を漂白してプリントするブロムオイルと違い、ゼラチン層の厚い石塚式オイルプリントでは剛毛ブラシであんなことをしたらゼラチンが破壊されてしまう。その代わり、画材店で容易に入手可能な染色用ブラシは、代用品のはずであったが、その毛先の柔らかさが功を奏し、最後の仕上げで触れるか触れないか、というフェザータッチのブラッシングで、コントラストが上がり微細な調子が現れる。石塚式独自の醍醐味は実はここにある。一人奮闘していた時は、ブラシの使用法には様々用語があるが、話し相手がいなければ用語など意味をなさないことに気付いて苦笑したものだが、今後ブラッシングの用法を伝えるには必要になってくるかもしれない。
「一角獣の変身-青木画廊クロニクル 1961~2016」刊行記念展Ⅰ
2017.05/20(土)~2017.06/02(金)
平日11:00~19:00 日祝12:00~18:00 5/28(日)休廊
HP
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