朝、T屋に行くと、すでに白髪に赤い顔した地元のタクシー運転手Tさんに、まだ60手前なのに、中学まで裸足だった運送会社のKさん。このメンバーでの、一言もためになる話が出ない、ぬるい一時は、私にとって何物にも代えがたいものがある。二人とも夜勤明けに飲んでいるわけだから、この脱力状態に巻き込まれるのは、一日の始まりに相応しいとはいえないのだが。元日大射撃部のTさん「俺、地獄ってないと思うけどさ、もしバットにとげとげついたみたいな棍棒もった鬼が出てきても、4人くらいなら鉄砲で倒せるんじゃないかと思うんだよね」この話は2度目である。「昨日の清水の次郎長観た?仕事中じゃなかったら石松助けにいったんだけどなあ」笑っている。これはいかん。振り切って撮影に向かう。 あらかじめアダージョ編集部より撮影許可を取ってもらっている。受付で書類にサインをし、撮影開始。向うから二人のおばさん。「かわせみいますか?」「いえ、鳥を撮っているんじゃないんで判りませんねェ」「あら、そう?さっきからヘンな所にカメラ向けてるから」「・・・・。」どうせ私はヘンなところばかりにカメラ向けてますよ。今日は人形を持ってないから良いようなものの、結構気にしているのである。だがしかし、今日の私はいつもと違う。腕には(財)東京都庭園協会の腕章である。これはつまり、ヘンなところにカメラを向けていても、深い事情があり、私はちっとも悪くない。ということを示しているのである。つまり堅気としての撮影である。シャッター音を気にし、カメラを懐に隠すこともない。罪悪感のカケラもないすがすがしい私は、青空の元弁当まで食べ、撮影を終えた。腕章を返しに管理事務所に行くと、園内の地図を示され、どの辺りで撮影したかを訊かれる。地図には升目がびっしりと引かれ、魚雷戦ゲームのようである。一枡1平方mで100円。「池の水面はカウントしないことになってます」。計算機片手の事務員。今回広い園内の、極一部を切り取ったのだが、真上から地面を撮ったわけじゃなし、遠景まで写っているから、「あのー、こっちの方まで写っちゃってますけど・・・」。もっとも、それは書類上のことで、今回は園の紹介もするということで使用料は免除、ということであった。地図の升目には驚いた。 自転車での帰り道、自転車に乗った若い警官が、人通りのない道とはいえ、車道を逆走してきた。成人式を迎えた諸君と違って、この齢になると警察官と気軽に交わることもない。この際なので、すれ違いざまに、下町の方言で思いっきり注意してあげた。 夜、高橋の『伊せ喜』にて、中央公論新社の“特命科”こと、アダージョの新年会。昨年暮れにここで鯰鍋を食べた時は、翌日各地で地震がおきた。メートルも上がり2次会は沖縄料理の『でいご』へ。編集長の、ある特集人物の提案に、一同唖然。大反対のデザイナーWさん。私は『に、日本に来たことないだろ?』しかし、これを逃したら二度と作る機会はないだろうと賛成。まあ明日になれば、昨晩の編集長の冗談、面白かったなあ、ということになるのではないか。
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