小四の時ねだって買ってもらった大人向け『一休禅師』の〝門松は冥土の旅の一里塚目出度くもあり目出度くもなし”の目出度たいけど目出度くない。初めて聞く言葉は、曽我蛇足描く、当時活躍した左卜全そっくりの挿絵と共に印象に残った。そこでシヤレコウべを竹竿に掲げた一休を作ったのだが、実は生きることはその分死に近付くことだ、ということが以来頭の隅に棲み付いていたことに最近気付いた。おかげで死の床で、あれをこれを作れば良かった、と後悔に身を捩りながら死ぬに決まっている、と長年嫌な気分であった。最近、長い予定など立てず、すぐ目の前の、手が届くパンだけに齧りついていれば、途中挫折の可能性は低くなると気付いた。夢を持ち続けてステキ!なんてことは夢に届きそうにない老人にいう言葉である。〝あすなろ”なんていっていられる程一生は長くない。あの時『一休禅師』をねだっておいて良かった。