ケイの読書日記

個人が書く書評

井上荒野「もう切るわ」

2006-09-05 10:07:50 | Weblog
 私はずーっと、井上荒野は井上靖の娘だと思っていて、得意げに他の人に教えたりして大恥をかいたことがある。
 本当は、井上光晴の娘だったのだ。


 この井上光晴という小説家は、井上靖と金子光晴の名前が融合しているから、なんとなく知っている、作品を読んだことがある、と思いがちだが、どうもそんなにメジャーな人では無かったみたい。
 少なくとも、私には作品が思い浮かばない。


 どうしてこんなことを書くかというと、先日、江國香織のエッセイを読んだばかりだからだ。
 いうまでもなく、江國香織は江國滋のお嬢さん。経済的にも文化的にも恵まれた環境で育ち、お母さんも妹さんも本当に浮世離れした人たち。


 それから比べると、井上荒野は結構、大変な境遇だったかもしれない。

 この「もう切るわ」の中に出てくる、嘘が人格の一部になってしまっている女にだらしない中年男は、彼女の父親がモデルだったかも、と勝手に想像してしまう。

 1人の男をめぐる妻と愛人と、その周辺の人々の人間模様が描かれているが、登場人物誰一人として好感の持てる人はいない。

 これが、井上荒野の持ち味なんだろうか?
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする