ケイの読書日記

個人が書く書評

エラリー・クイン「エジプト十字架の秘密」

2006-09-10 22:49:20 | Weblog
 国名シリーズでは珍しく、エラリーが金田一耕介化している。(ファイロ・ヴァンス化しているとも言える)
 何しろ被害者が4人になるまで、彼には全く犯人の見当もつかなかったのだから。

 いままでのエラリーだったら、最初の殺人がおきた時点で父親とこういう会話が交わされる。

 父親リチャード・クイン警視「どうだね、エル。おまえにはもう何もかも分かっているだろうね」
 息子エラリー「もちろんです、お父さん。あと2つ3つの論理的考察をつけくわえるだけです」

 なーんて、すましこんでいただろう。しかし今回はまったくダメ。

 
 大学時代の恩師の教授にもボロクソにこき下ろされている。
 「…そういっては悪いが私は少し失望したね。クイーン君、きみは一体いつになったら始めるつもりなのだ?つまりシャーロック先生が蹶起一番して、例の卑劣な犯人の手首に鉄の手錠をはめるのはいつのことかね」


 いやぁ、本当に面目丸つぶれのエラリィだが、こういった彼も新鮮で好ましいなぁ。エジプト十字架型(T字型)に頭を切り落とされ、磔にされた被害者4人には申訳ないが…。

 
コメント (5)
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