ケイの読書日記

個人が書く書評

坂口安吾「明治開化 安吾捕物帖」

2007-02-10 14:14:09 | Weblog
 この「安吾捕物帖」には昭和25年から27年までに発表された9話の短篇が収められている。先日読んだ「不連続-」と比べると、これはこれで別の味わいがあるのだが、残念ながら少々落ちます。

 名探偵も出てくるし、殺人事件も起こるし、最後にはキチンと解決するが、推理仕立てのお伽噺というカンジですね。

 舞台は明治になってまもない江戸…じゃない東京。名探偵役の結城新十郎は旗本の末孫、幕末の徳川家重臣の一人を父にもったハイカラ男。
 勝海舟や鹿鳴館、小間物問屋、戯作者、丁稚、番頭、江戸城空け渡し、上野寛永寺の戦い、旗本、幕府瓦解、男爵、公爵etc…。幕末と明治がごっちゃになって、リアリティというものがあまり感じられず、メルヘンチックになっている。

 でも、物証と言うものが何もないけど、論理的には説明がついており、寝る前に1話ずつ脳トレとして読むのは楽しいかも。
 私は、この中では「覆面屋敷」が一番気に入っている。


 いつも思うが、この世代の作家は自分の親や祖父母が幕末から明治維新の動乱期を生きていて、江戸の話を子守唄かわりに聞いたのだろう、江戸の風俗が違和感なくイキイキと描かれている。
 今の作家じゃこういう訳にはいかないだろう。素晴らしい。
コメント (6)
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