ケイの読書日記

個人が書く書評

坂口安吾「不連続殺人事件」

2007-02-05 17:05:21 | Weblog
 坂口安吾の推理小説ではない小説は、出来不出来の差が激しくて、いいものは凄くいいのだが、悪いのは箸にも棒にもかからない、と感じているので、この小説もさほど期待せずに読んだ。
 でも結構面白い。もっと早く読めばよかった。


 戦後間もない昭和22年夏、関東の片田舎。土地の豪農の屋敷にいわくありげな人々が集まってくる。そしてお互いに反目している間に次々と殺されていく。
 なんと、1ヶ月の間に、8人!!  鳥インフルエンザより怖い!

 パニックになりそうなものなのに、皆さん逃げ出さず人の作った食事をムシャムシャ食べている。度胸あるなぁ。

 登場人物が多いので、少々死んでもまったく犯人候補には事欠かない。たいしたトリックは無いが、いろんな組み合わせを考え、可能性を吟味する。

 最後は、うーん、なるほどね。確かにここら辺が不自然だと思った。こうすれば犯行は可能だ。中々良くできていると思う。(現実の事件だったら、犯行が多ければ多いほど、遺留品が残ったり目撃者がいたりして、犯人には不利だろうが…)

 登場人物のいがみ合う原因は普通は金だが、この「不連続ー」の場合、男女間のもつれで、まるで群婚状態のように関係がからみあっている。未婚も既婚も関係ない。
 だいたい、村一番の長者の娘が20人近くいる客の前でパンツ一枚になり、情人と手をつなぎ寝室に消えていく、なんてことあるんだろうか?(横溝正史の「本陣ー」も同じ年代の地方の名家が舞台だったが、こっちは堅いもんだった)


 一ヶ月に8人も殺されて、警察や探偵は何をやってるんだ!! と憤る人も多いだろうが、何もやってない。特にこの巨勢探偵は金田一に勝るとも劣らない無能ぶり。誰一人救えなかったばかりか、最後には犯人に自殺されてしまう。
 小梅太夫ではないが、チクショー!!!!!!!
コメント (4)
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