ケイの読書日記

個人が書く書評

京極夏彦「姑獲鳥の夏」

2007-02-20 10:29:37 | Weblog
 この『姑獲鳥の夏』は評判が良いようなので、読むのが楽しみだったが正直な所がっかりです。(京極堂ファンの皆さん、ごめんなさい)

 東京・雑司ヶ谷の医院に奇怪な噂が流れる。娘は20ヶ月も身ごもったままで、その夫は密室から失踪したという。

  …ネタバレになるので未読の方はご注意下さい。…

 
 「見たくない」という心理的メカニズムが働いて、目の前の物が見えないという現象は理解できるが、それが長期間にわたって複数の人間に同時に起きるだろうか? これが"可"なら、どんな物でも"可"になってしまう。いくらなんでも反則じゃないの?

 ずいぶん前に、カーの推理小説の中で、時計が壊れていて結局時間が違っていたというトリックがあったが、この時も非常に憤慨した。
 そりゃ、現実には時計が壊れている事はあるだろう。でもその目撃時間が密室を構成する大きな要因なんだから、密室崩しが「時計が壊れていた」じゃ、あまりにも読者をバカにしているんじゃないだろうか?


 文句ばかり書いたが、昭和27年という時代のレトロな雰囲気は素晴らしいし、京極堂や文士・関口、探偵・榎木津たちが旧制高等学校の同窓生というのも私の好み。
 特に京極堂が芥川龍之介に似ているというのにはグッときた。
 関口は猿に似ているそうだが、榎木津は西洋の磁器人形に似ているらしい。すごいなぁ。映画では誰が榎木津の役をやったんだろうか。
コメント (6)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする