ケイの読書日記

個人が書く書評

角田光代「対岸の彼女」

2009-04-19 11:34:49 | 角田光代
 近くで古本市があり、ぶらりと立ち寄った時、目に付いたので買ってみた。

 専業主婦・小夜子と、ベンチャー零細事業の女社長・葵との友情と亀裂を書いた第132回直木賞受賞作。

 それぞれの中学高校時代の話が書かれていて、自分にも心当たりがありすぎて、読んでいて苦しい。

 35歳の女社長が自分の子どもの頃を述懐してこう語る。
「お友達がいないと世界が終わるって感じ、ない? 友達が多い子は明るい子。友達のいない子は暗い子。暗い子はいけない子。そんなふうに誰かに思い込まされているんだよね」

 その通り、でもそれは35歳になって初めて口にできる事であり、中学・高校時代にそう感じていても、一生懸命グループから離れないように浮き上がらないように細心の注意を払って行動していた自分を思い出す。
 世界の各地で紛争があり、大勢の人が死んだり傷ついたりして大変な事になっており、自分の今の生活がいかに幸せなものか、頭の中では理解しているけど、でも、この狭い交友関係が自分にとって全てに優先するような気がしていた。その時は。

 友達が多くて楽しそうにしている人も…それなりの苦労があるんだとわかったのは、学校を卒業してしばらくしてからです。

 いじめにあって遠くの高校に引っ越した葵と、恵まれない家庭のナナコ。2人の友情は切なくて胸を打ちます。ナナコが今、どんな生活をしているか分からないけど、葵との1年半を懐かしく思い出す事があるんでしょうか?
コメント (2)
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