ケイの読書日記

個人が書く書評

今野浩「工学部ヒラノ教授の事件ファイル」

2012-08-24 16:15:26 | Weblog
 新聞の書評欄で取り上げられていた。中央大学キャンパス刺殺事件(卒業後の人生がうまくいかない男が、大学時代の指導教官のせいだと逆恨みして、学内のトイレで教官をメッタ刺しにした事件)の事が載っているとあったので、興味深く読んでみたが…ほんの数ページ。がっかりした。

 そりゃそうだろう。筆者は、その当時、同じ大学に勤務していたが、大学の健康診断でちょっと言葉を交わしただけで、ほとんどどんな人か知らないのだ。

 ただ、こう言った事件は、数は少ないが昔からあったようだ。特に、理系の場合、指導教授の紹介で就職することが文系に比べ多いので、就職先でうまくいかないと、教授に人生を狂わされた、と思い込む人も多いのだろう。

 筆者は、東京大学工学部応用物理学科卒業。筑波大学、東京工業大学、中央大学で、それぞれ教鞭をとり、現在は東京工業大学名誉教授。すっごーく!頭の良い人なのだ。
 しかし、学内で出世しようとすると、政治力・処世術が必要で、そこらへんの事は「論文盗作とデータの捏造」「領土侵略事件(ポストの奪い合い)」「大学という超格差社会」「セクハラとアカハラ(アカデミックハラスメント)」などに書かれている。なかなかえげつない。


 また、日本の大学が抱える犯罪的「非常勤講師制度」についても書かれてある。
 最近よく聞く「高学歴ワーキンクプア」のこと。
 非常勤講師はアルバイト職員だから、ボーナスは出ないし、昇給もない。夏休みで講義が無くなると無給。だから、年収200万円にも届かない人が多いという。
 常勤職に拾い上げてもらうことを目指しているが、ポストの空きがなく、難しい。

 この非常勤講師問題は、大学だけでなく、公立の小中学校でも問題になっている。
 父兄の中には「あの先生は非常勤講師だから」と、差別的な言動をする人もいるしね。こうなると、子どもはますます言う事を聞かなくなるだろう。
コメント
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