いよいよ父親殺しの㊥巻へ突入…でも、意外!! その殺害の部分は書かれていないんだ。だから、この先さまざまな疑惑が頭をもたげる。
父親と長男は女を巡り、金を巡り、激しく対立するが、肝心の女は、かつての恋人に呼び出され、彼らの元を逃げ出す。一文無しのドミートリィはなんとか金を作って追いかけようとするが、金策にすべて失敗する。
女が来たと思って、窓から顔を出した親父を、長男は憎々しげに見つめ、凶器を握りしめる所で、ポンと場面が変わっている。
ドミートリィは、逃げる所を追ってきた執事を半殺しの目に合わせ、数時間前までは一文無しだったのに、3000ルーブルもの大金を店に持ち込み、シャンパンやお菓子や高級食材を馬車に積み込み、あちこちに金をばらまき、女を追いかける。
追いつかれた女は、かつての恋人に幻滅し、ドミートリィを愛するようになるが、彼は警官隊に拘束される。
ドミートリィは、執事を殴ったことは認めるが、父親殺しも3000ルーブルを奪ったことも否認。部屋に入ったことすら否認する。
本当にミステリ仕立てなんだ!! 驚きました!!
しかし、どこから見てもドミートリィの容疑は、限りなく黒に近い灰色。しかも、つまらない、辻褄のあわない言い訳ばかりして墓穴をほっていく。
この19世紀中期のロシアの片田舎でも、ちゃんとした尋問が行われるのが意外だった。容疑者が一文無しとはいえ貴族だから? 威嚇も脅しも拷問も、全く無し。極めて紳士的。19世紀の中期と言えば、日本は江戸時代末期だろうに。