ケイの読書日記

個人が書く書評

角田光代「紙の月」

2013-09-10 13:36:49 | 角田光代
 大手銀行の契約社員・梨花が、お客のお金を横領して、うんと年下の若い男に貢ぐ話だが、この梨花という女性は、女子高時代「おろしたての石鹸のような美しさを持つ子」だったらしい。
 角田光代の書く女性は、いつも「ああ、いるなぁ、こういう人」とか「自分の中にも、そういう部分があるよね」と感じることが多かったので、感情移入しやすく読みやすかった。

 しかし、この「おろしたての石鹸のような美しさを持つ子」というのがイメージできなくて、この作品の最初の方は、読みづらかったね。
 だって、そんな女の子、私の周りにいなかったもの。異性から、そう思われていた女生徒はいただろうけど、同性から「おろしたての石鹸のような」と思われる人は…いないだろうなぁ。


 梨花に子どもはおらず、ダンナは上海に単身赴任中なので、横領したお金で、高級マンションを借り、高級車を買い、ホテルのスイートルームで連泊し、梨花は男とやりたい放題。
 でも、横領犯もラクではない。横領がバレないように1日の有給休暇も取らず、無遅刻・無欠勤で銀行に通う。
 預金通帳を偽造するため、カラーコピー機を買うが、たまに帰ってくるダンナに見つかると不審に思われるので、コピー機を置き偽造するためだけに、ワンルームマンションを借りる。 
 横領した金だけでは遊ぶ金が足らなくなり、サラ金にまで手を出すが、それを返済するため、また別のサラ金からお金を借りる。
 最後の方は、いくら客のお金を横領したのか、いくらサラ金から借りたのか、判らなくなる。というか、知ろうとしない。だって知っても返済できないんだもの。

 結局、梨花は一億円ほどのお金を横領し、発覚が避けられないと知ると、貢いだ男に「私の事は知らないと言いなさい」と伝え、海外に逃亡する。

 最大の被害者はダンナだよね。このダンナ、大人しくて無駄遣いしなくて、本当にいい人。でも、女房のおかげで、何もかも無くしちゃうよね。勤め先も、持ち家も、人間関係も。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする