ケイの読書日記

個人が書く書評

杉山春「ルポ虐待 大阪2児置き去り死事件」

2013-12-09 13:55:25 | Weblog
 2010年夏、3歳の女の子と1歳9か月の男の子の死体が、大阪市内のマンションで発見された。
 子どもたちは、猛暑の中、クーラーのついていない部屋の中の、堆積したゴミの真ん中で、服を脱ぎ、重なるようにして死んでいた。内臓の一部は蒸発し、身体は腐敗し、一部は白骨化していた。

 母親A子さんは風俗嬢。子どもを約50日間放置して、男と遊びまわり、その楽しそうな様子をSNSで紹介していた。

 部屋から異臭がする、という通報を受けた風俗店のマネージャーが、A子さんに連絡、部屋へ行かせるが、A子さんは変わり果てた我が子の姿を目にし、マンションを飛び出した。交際相手を呼び出し、神戸の観光地にドライブに出かけ、ブログ用に観覧車の写真を撮り、ホテルでセックスする。


 この、あまりに悲惨な事件を覚えている人も多いと思う。でも、私は別の事で印象深い。
 A子さんと子どもたちは、もともと四日市市出身。大阪に移る前に、名古屋の大須観音参道沿いのマンションに、短期間だが住んでいたらしい。
 私は大須観音にはよく行くので、ショックだった。ここにA子さんたちが…。大須観音の境内にも、ひょっとしたら子どもたちを連れて遊びに行ったかもしれない。
 名古屋という所は、母子家庭に比較的手厚い。いろんな手当だって受けられる。でも、A子さんは、住民票さえ移さなかった。だから、お金はもらえない。


 幼い子どもを連れて離婚した場合、頼るのは実家の母親だ。だけど、A子さんの母親という人は、A子さん以上に不安定な人で、頼ることができない。
 母親は2度、結婚離婚し、最初の結婚で3人、次の結婚で2人の子どもを産むが、どの子も育てていない。リストカットやオーバードーズを繰り返し、本人も周囲も、この人に子どもを育てるのは無理だと分かっているのだろう。
 こういう点が、A子さんの不幸、この悲惨な事件の遠因だとは思う。でも、じゃ、なぜ母親のように子どもを捨てなかった?


 A子さんの中学時代のヤンキー仲間は、ほとんどが結婚して子どもがいるが、その9割が離婚しているという。でも、誰の子どもも死んでいない。シングルマザー同士のおしゃべりで、大変な時は、どの行政窓口に泣き付けばいいか、どんなサービスが受けられるか、知らなかった?!

 それを、子どもたちが外に出てこないようにと、扉の上下をガムテープで止めるなんて、殺意があると思われても仕方ないよ。
 ガムテープで止めなかったら、子どもたちがヨロヨロと外に出て来て、保護され、命が助かったかもしれないのに。

 本当にどうすればよかったのだろう。


 A子さんのダンナ側が養育するという事も考えられる。でも、離婚の原因がA子さんの浮気にあるのだから、感情的には難しいかも。「本当にオレの子?」という思いが、どこかにあるかもしれない。将来的に再婚も考えられる。継母に育てられるより、実母に育てられた方が、子どもたちのためになる、と思ったのかもしれない。


 それにしても、A子さんの男性関係のだらしないこと。いったい何十人と寝た? ひょっとしたら3ケタいくかも。
 離婚原因となった浮気相手の所に、離婚後転がり込もうとしたら拒否される。仕方ないので、別の交際相手の大学生の所に行くが、すぐに追い出される。
 こんな、どうしようもない男たちに、風俗代わりに利用されるんじゃないよ!! A子さん、もっと打算的になれ! もっと自分を高く売れ!
 本当にロクでもない男ばかりで、唯一まともだったのが、結婚したダンナ。でも、別れちゃったのだ。

 複雑な家庭に育ったA子さんだけに責任を押し付けるべきではないが、彼女は見栄っ張りすぎる。子どもをちゃんと育てていると思われたくて、結果、子どもを死に追いやるのだ。育てられなかったら、捨ててください。それしかない。
コメント (2)
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