ケイの読書日記

個人が書く書評

三島由紀夫「金閣寺」

2014-06-19 14:14:20 | Weblog
 三島由紀夫の美意識が、全ページに流れていて、三島ファンだったら大喜びだろうが、私では…ちょっと難しい。荷が重いです。

 昭和25年に実際起きた、金閣寺放火焼失事件を題材にした、三島由紀夫の代表作。
 放火した僧の、内心の葛藤はさて置き、表面的には、こういったストーリーです。


 山陰の田舎寺の青年が、金閣寺で修行することになる。金閣寺の老師と、青年の父親が、若い頃一緒に修行した仲だという縁で、金閣寺に預けられることになったのだ。父親は、その後、結核で亡くなり、母親は、寺の権利を売って、親せき宅に身を寄せる。 
 老師には、子どもがおらず、ゆくゆくは息子が老師の跡を継いで、金閣寺の住職となる事を、母親は夢見ている。
 しかし、青年は、老師がどうしても尊敬できず、自分の立場が悪くなる事ばかりするようになる。
 とうとう老師から、跡継ぎにするつもりはないときっぱり言われ、出奔した青年は「金閣を焼かなければならぬ」という考えに取りつかれる。そして…。

 もちろん「金閣を焼かなければならぬ」という想念に囚われるまでには、単純ではない、様々な感情の起伏があった。特に、柏木という奇矯な友人と出会ってからは。
 この青年は「理解されないということが、私の存在理由だった」というほど、難しい人だからなぁ。


 実際の放火僧は、動機について「美への反感」と語ったそうだが、そんな観念的な理由ばかりではなかったのかも。(三島は怒るかもしれないけど)

 父親が死んで、相続するはずだった寺の権利を母親が売ったので、帰るべき場所が無くなった青年。親代わりになるはずの老師との不仲。「美への反感」もあるが、将来への経済的な不安が、どうしてもぬぐえない。
 老師にすべて握られているという苛立ち、それを破壊するために、自分を破滅させたのでは?
コメント
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