ケイの読書日記

個人が書く書評

東野圭吾「虚構の道化師 ガリレオ7」

2014-09-01 14:42:36 | Weblog
 4編収録。すべてTVドラマ化されていて、そちらの方は見ていた。なかでも、第1章「幻惑す(まどわす)」は、なかなか秀逸なトリックだと思う。TVドラマの方でも、前後編の2回に分けて、力を入れてドラマ化していた。
 この作品は、映画化しても成功したんじゃないかな。


 新興宗教内でトラブルがあり、責められた1人の幹部が、5階から転落して死亡する。教祖が念を送って、幹部の悪い心を浄化しようとしたのだが、その念が強すぎ、幹部が5階から飛び降りたのだ。教祖が指一本触れていないのに。
 この事件が、週刊誌に掲載され、教祖の念能力が本物だという事で、教団はどんどん拡大していく。
 
 「親戚の婆さんが、教団に入信しそうなので、インチキを暴いてほしい」と草薙に頼まれた湯川は、週刊誌の編集長という肩書で、教団に乗り込むが…。

 
 なるほどね。こういった構造になっていれば、こういう現象も起こるだろう…と素人でも分かりやすいトリック。


 もう一つ、印象に残ったのが、第4章「演技る(えんじる)」。 ほら、TVドラマでは蒼井優が、女優役をやっていた。読み始めた時、ちょっと混乱した。この作品って、貴志祐介の防犯探偵・榎本シリーズじゃなかったっけ…と。
 どうして、そんな勘違いをしたかというと、どうも劇団内の犯罪という設定だから、だと思う。
 榎本径シリーズに、全く売れてない『土性骨』という劇団が登場する。奇人変人の集まりで、何度も殺人事件が発生するのだ。それを、劇団の宣伝に利用しようとするのだが、上手くいかない。
 その劇団と、混同してしまったのだ。

 この4章に限って言えば、TVドラマの脚本の方が、原作より良いと思う。原作だと、月と花火が移っている写真が、どのようにトリックに利用されているか、よく分からない。犯人像も、スッキリしない。
コメント
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