ケイの読書日記

個人が書く書評

サックス・ローマー「骨董屋探偵の事件簿」

2014-10-18 17:07:51 | Weblog
 たかさんのブログで紹介されていて、面白そうだったので読んでみた。
 ちょっと前に「サイコメトラー・エイジ」というマンガがあったでしょう?(TVドラマ化も)あの主人公は、犯行現場の遺留物から手掛かりを知るけど、この骨董屋探偵モリス・クロウは犯行現場の大気から手掛かりを知る。
 犯行現場の大気には、被害者の恐怖や驚き、加害者の悪意や怒りの感情の刻印が残されていて、モリス・クロウは、それを自分の頭の中に写し取り、捜査に利用するのだ。
 たかさんの書かれているように、探偵小説としては、かなり変則的だが、犯人がバッチリ頭の中に映し出されるんじゃなく、あくまでも手がかりなので、ちゃんと推理部分はある。トリックも悪くないと思う。

 探偵役のモリス・クロウが骨董屋なので、全体的にオカルト風。でも、作者がカーほどの名手じゃないので、すごくライトなオカルトで、あまり怖くない。同じ題材でカーが書いたら、おどろおどろしくて眠れなくなるほど怖い作品になるだろうに。

 だから、読んでる最中に飽きが来て、関心があっちこっちに飛ぶ。例えば、クロウは年寄りで身なりは貧しく、ケープの付いた黒い外套に黒の絹スカーフを巻いて、古めかしい茶色の山高帽をかぶっているのだが、その帽子からバーベナの香水を出し、額に吹きかけるのだ。これで清めるらしい。
 だけど、いくら小さなスプレー瓶でも、どうやって出すの?山高帽の内側にポケットでも付いているんだろうか? それとも頭の上に載せている? まさか。ずーっと気になっている。

 それに、この薄汚れた姿のクロウには、素晴らしく美しい娘イシスがいて、彼の助手的役割を果たしている。ブルネットの髪と大きく煌めく黒い瞳を持ち、しなやかなボディをパリ仕立ての美しいドレスで包んで登場。毎回、周囲の男たちをざわつかせている。
 金髪で青い眼のクールビューティが、悩殺美女の定番だと思っていたが、ブルネット美人も負けてはいない。そういえば、クリスティのミステリにもブルネット美人が、よく登場する。黒い髪、黒い瞳というのは、異国情緒があって、魅力的なんだろう。
コメント (2)
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