水木しげるは1922年(大正11年)生まれ。ということは、私の父の4歳年上になるわけだ。
この本には、山陰の境港で生まれ、ガキ大将として暴れまくっていた「ゲゲル」の幼少年時代が、いきいきと書かれている。むしろ、のんのんばあとの思い出よりも、このガキ大将帝国の攻防のほうがメイン。
ちっちゃな頃、しげる氏は、自分のことを「シゲル」と発音できず「ゲゲル」と言ったので、周りから「ゲゲ」と呼ばれていたとか。わーーー!可愛らしいエピソードです。
ゲゲが生まれた頃、つまり大正から昭和初期にかけての境港のあたりでは、神仏に仕える人のことを「のんのんさん」と言っていた。その人がお婆さんなら「のんのんばあ」。その「のんのんばあ」が、ゲゲの子供の頃いつもゲゲの家に来ていた。昔、ゲゲの家の女中さんをしていたらしい。
NHK朝のドラマ『ゲゲゲの女房』を見ていた人なら分かると思うけど、ゲゲの生家って、裕福だったんだよね。お祖父さんの代まで境港で廻船問屋をやっていたし、お父さんは、明治時代に東京の大学に行って、帰郷して銀行に勤めていた。
こらえ性のない人で、転職を繰り返し、だんだん財産を無くしていったけど。
のんのんばあは、その頃は拝み屋みたいなことをしていたが、お客さんはさっぱり来ず、ダンナにも死に別れ、養子にもらった子供もハシカで死んだ。経済的に窮乏しているらしく、子守をしながら、こっそり雇い主の米櫃の米を失敬することもあったらしい。
そののんのんばあは、ゲゲをとても可愛がり、お化けや妖怪などの話をたくさんしてくれて、ゲゲはすっかりその世界に浸ってしまった。
もともと目に見えない世界を信じる傾向が強かった人なんだろうね。
ゲゲの学校近くにある樹齢何百年という古い大木の下に、壊れたお雛様がよく捨ててあったそうだ。死体のように見えたという。
そのお雛様が、見えなくなった。その古い大木を通じて、どこか別の世界に行くのだろうと、信じていたそうだ。
ちょっとロマンチックな話だね。こういう人は、お雛様を誰かが拾っていった、とか、燃やしたとか、考えないんだよね。
しかし、ゲゲが小学校5年の時、のんのんばぁが死ぬ。ばあは、結核患者の看病をして収入を得ていたが、自分にうつってしまったのだ。高齢だし、貧乏でロクに物を食べていないので体が弱っていたのだろう。
悲劇だが、水木しげるが書いているように、戦前の日本海側の一寒村の片隅で生活していた人たちの、平均的な姿なんだろう。
でも、この困窮のうちに死んだのんのんばあが、後の鬼太郎を生み出したともいえる。それを思えば、素晴らしい一生だった。
この本には、山陰の境港で生まれ、ガキ大将として暴れまくっていた「ゲゲル」の幼少年時代が、いきいきと書かれている。むしろ、のんのんばあとの思い出よりも、このガキ大将帝国の攻防のほうがメイン。
ちっちゃな頃、しげる氏は、自分のことを「シゲル」と発音できず「ゲゲル」と言ったので、周りから「ゲゲ」と呼ばれていたとか。わーーー!可愛らしいエピソードです。
ゲゲが生まれた頃、つまり大正から昭和初期にかけての境港のあたりでは、神仏に仕える人のことを「のんのんさん」と言っていた。その人がお婆さんなら「のんのんばあ」。その「のんのんばあ」が、ゲゲの子供の頃いつもゲゲの家に来ていた。昔、ゲゲの家の女中さんをしていたらしい。
NHK朝のドラマ『ゲゲゲの女房』を見ていた人なら分かると思うけど、ゲゲの生家って、裕福だったんだよね。お祖父さんの代まで境港で廻船問屋をやっていたし、お父さんは、明治時代に東京の大学に行って、帰郷して銀行に勤めていた。
こらえ性のない人で、転職を繰り返し、だんだん財産を無くしていったけど。
のんのんばあは、その頃は拝み屋みたいなことをしていたが、お客さんはさっぱり来ず、ダンナにも死に別れ、養子にもらった子供もハシカで死んだ。経済的に窮乏しているらしく、子守をしながら、こっそり雇い主の米櫃の米を失敬することもあったらしい。
そののんのんばあは、ゲゲをとても可愛がり、お化けや妖怪などの話をたくさんしてくれて、ゲゲはすっかりその世界に浸ってしまった。
もともと目に見えない世界を信じる傾向が強かった人なんだろうね。
ゲゲの学校近くにある樹齢何百年という古い大木の下に、壊れたお雛様がよく捨ててあったそうだ。死体のように見えたという。
そのお雛様が、見えなくなった。その古い大木を通じて、どこか別の世界に行くのだろうと、信じていたそうだ。
ちょっとロマンチックな話だね。こういう人は、お雛様を誰かが拾っていった、とか、燃やしたとか、考えないんだよね。
しかし、ゲゲが小学校5年の時、のんのんばぁが死ぬ。ばあは、結核患者の看病をして収入を得ていたが、自分にうつってしまったのだ。高齢だし、貧乏でロクに物を食べていないので体が弱っていたのだろう。
悲劇だが、水木しげるが書いているように、戦前の日本海側の一寒村の片隅で生活していた人たちの、平均的な姿なんだろう。
でも、この困窮のうちに死んだのんのんばあが、後の鬼太郎を生み出したともいえる。それを思えば、素晴らしい一生だった。