ケイの読書日記

個人が書く書評

明野照葉 「輪(RINKAI)廻」

2015-11-23 14:20:36 | Weblog
 「りんね」ではなく「りんかい」と読むらしい。
 「累もの」(かさねもの)って、皆さん、知ってますか? 私は知らなかった。


 下総国羽生村の累は、嫉妬深く、しかも醜かったので、うんざりした夫・与右衛門から邪魔にされ殺された。夫は、若く美しい妻を迎えたが、すぐ死に、次に娶った妻にも、その次の妻にも次々死に別れた。しかし、6人目の妻は死なず、可愛い女の子・菊を生んだ。
 その菊が大きくなり、婿を迎えると、再び累の死霊がよみがえり、菊にとりつく。累は菊の口を借り、かっての夫の悪業を喚き散らす。
 実は、再婚だった累の母も、夫の愛を失いたくないために、醜い連れ子(累の腹違いの姉)を殺していたのだ。
 近くに修行僧が滞在していると聞いた与右衛門は、今までの事情を話し、救いを求める。修行僧は、累の死霊を調伏し、三代にもわたる因縁の系を絶った。


 これ、歌舞伎や浄瑠璃で有名な話なんだってね。「親の因果が子に報い…」という思想は日本人にはなじみやすい。

 この「輪廻」は、その古典的な怪談話を現代風にアレンジしたもの。男女間の愛憎が発端ではなく、嫁・姑間の対立が、発端になっている。かえって現代的かもね。 
 ただ、因果応報があまりにもストレートで、かえって怖さを感じない。もう少し、うっすらと、ぼんやりと怪異を書いた方が、ゾクゾクするだろう。
 それにしても、夫の愛を繋ぎとめるため、連れ子の娘を殺した累の母親や、財産目当てで結婚し、その妻を殺して財産を乗っ取り、新しい妻を迎える元浮浪者の与右衛門など、大した罰を受けてないじゃない?! いいの?
 罪を悔い、仏にすがれば、何でも許されると考えているんだろうか、江戸時代の人は。

 だいたい、子孫に祟るなんてオカシイ。その人に祟ればいいんだよ。悪者が子孫を残さなければ、祟る人がいないじゃん。
コメント
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