ケイの読書日記

個人が書く書評

宮沢賢治 「風の又三郎」

2020-08-07 17:08:30 | その他
 私ったら、こんな有名な作品を読んでなかったんだ!!と愕然とする。そういえば子どもの頃、読もうと思って本を開いたが、擬音が多いし方言がすごく独特(岩手の言葉)で読みにくかったので、最初の1、2ページで止めてしまったんだ。
 他にも有名な「銀河鉄道の夜」も読んでいない。こっちの方は、松本零士の名作マンガ「銀河鉄道999」で読んだ気になってしまってた。

 あまりにも有名な作品って、あらすじを知ってるから、読んだつもりになってしまう。気を付けなければ。

 この「風の又三郎」は素敵な作品です。
 昔々の9月1日、岩手県の片田舎の小学校に、高田三郎という子が転校してきた。彼の父親は鉱石の技師で、その仕事のため北海道から岩手に来たのだ。だから三郎は地元の子どもと比べちょっとだけインテリっぽい。
 風のすごく強い日に転校してきたので、子どもたちは三郎の事を「風の又三郎」と呼ぶようになる。詳しい説明は作品の中ではなされていないが、どうも「風の又三郎」とは、人ならざる者、一種の超常的な力をもった存在らしい。
 山の中の小さな学校なので、小学5年生の三郎は、色んな学年の子どもたちと山遊び・川遊びをする。ここら辺の描写が、本当に生き生きしていて素晴らしい。

 子どもたちは馬を放牧している場所に行って、馬と一緒に駆け回る。馬と言ってもサラブレッドとは違い日本在来種なのでポニーみたいに小さい。それでも農耕馬として使役したり、競馬に出場させたりして価値が高いので、大人にとっては一財産なのだ。その馬が逃げ出し、子どもたちは追いかけるが、山の中で迷子になってしまい、おまけに悪天候。命の危機にさらされる。最終的には助かるが、野山での遊びは危険と隣り合わせだ。
 川遊びも楽しい。大人が川で火薬を爆発させ魚を獲る。(ちなみに違法。お巡りさんに見つかると引っ張られる)そのおこぼれで、死んだ魚や弱っている魚が流れてくるので、子どもたちがその魚を大喜びで捕まえる。
 川で泳ぐのも楽しい。ただ、流される子もいただろうね。今の感覚でいうと、すごく危険。

 こういった楽しい日々はあっという間にすぎて、三郎はまた、ひどく風の強い日に北海道に戻って行った。まるで本当に「風の又三郎」だったみたいに。
コメント
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