ケイの読書日記

個人が書く書評

米澤穂信 「氷菓」 角川文庫

2020-03-18 09:22:28 | 米澤穂信
 諸事情がありまして、ブログの更新が遅れています。もし、楽しみにしている方がいらっしゃいましたら申し訳ないです。

 この『氷菓』は、米澤穂信のデビュー作であり出世作で有名なので、読みたいと前から思っていたが、期待を裏切らない秀作。古典部シリーズと銘打っているが、古典部って何する所? 日本の古典を読む会なの? その疑問に、この本は最後まで答えていない。

 何事にも積極的にかかわろうとしない省エネ少年・折木奉太郎(おりきほうたろう)は、なりゆきで入部した古典部の仲間に依頼され、日常の謎を次々と解決していく。本当に些細な事件とも言えない事件がほとんどだが、33年前に古典部で起きた事件の推理はなかなか見事なもの。1967年だったら、こういう事もあっただろうよ。

 ただ、この小説の魅力って推理部分以上に、青春ミステリって所にあると思う。古典部の面々は、主人公の折木奉太郎、部長の千反田える、奉太郎の友人の福部里志、そして里志に言い寄っている伊原麻耶花の4人。全部1年生。男女比2対2。青春しちゃってるんだ。
 こういった爽やかでちょっぴりほろ苦い青春小説を読むと、私はどうにも落ち着かなくなる。自分のあまりにも灰色の高校生活を思い出して。過去は美化されるというが…私の場合、ならないね。ああ、恥の多い高校生活だった。身もだえするほど。

 『氷菓』というのは、古典部の文集の名称。文集の名前にしては変わってるでしょ? 氷菓って、アイスキャンディみたいな氷のお菓子の事だよね。これにも、ちゃんと意味があるんだ。33年前に古典部の部長が名付けた。
 その第2号の表紙を開くと序文が記されている。その最後に…
 「いつの日か、現在の私たちも、未来の誰かの古典になるのだろう」  いい言葉だ。
 遠い未来、今、私の住んでいる町が廃墟になって砂の下に埋もれてしまっても、誰か探検家がやって来て、わたしが付けている家計簿を掘り出し、西暦2020年にこの極東の島国で卵1パック188円だったのかと、調べる人がいるかもしれないね。

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4 コメント

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Unknown (たか@ヒゲ眼鏡)
2020-03-22 03:09:02
読んだ事は全くないのですが、アニメ化の絵が可愛いなあと思いました。
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たかさんへ (kei)
2020-03-25 13:31:43
 コメント、ありがとうございます。この古典部シリーズ人気があるみたいね。アニメ化されてても不思議はないです。
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「氷果」 (宵待草)
2024-12-14 23:52:34
まずごく日常的な小さなさりげない謎、千反田えるが、3分ほどの間に教室に閉じ込められてしまった謎。

毎週金曜日の昼休みになると借り出され、放課後に返却される「神山高校五十年の歩み」の謎などがある。

それらが最後の大きな謎へと繋がっていきます。
ごくさりげない謎だからこそ、そして登場人物たちが、ごく普通の高校生だからこそ、気がついたら一緒になって考えてしまっている。そんな感じです。

物語には派手さが全くないので、物足りなく思う人もいるかも知れません。
あくまでも淡々と進みます。
でも私にとってはとても心地よい作品でした。

こんな高校生活(部活生活)って、とてもいいなと思います。
さりげない日常がとてもいいですね。

それにしても、主人公のホータローは、省エネだと言ってる割に、千反田えるに引っ張られてこまめに動くんですよね。
なんだかんだ言って。それが妙に可愛いですね。
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宵待草さんへ (kei)
2024-12-19 14:26:52
>宵待草 さんへ
>「氷果」... への返信
コメントありがとうございます。青春、しちゃってますね。筆者の米澤穂信も若いから書けたんだと思う。最近の代表作は『可燃物』ですが、こっちは渋いですよ。
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