ケイの読書日記

個人が書く書評

林真理子「ロストワールド」

2015-02-13 10:49:10 | Weblog
 林真理子の小説は、あまりハズレがないが…これは、残念ながら失敗作だと思う。

 バブル期に大儲けした不動産屋と結婚した瑞枝は、一女をもうけたものの離婚。そしてバブル崩壊。夫だった男の会社はあっけなく倒産し、詐欺まがいの事件を起こし、男は表舞台から消えた。
 慰謝料はもらっていたが、子どもの養育費など、払ってもらえる状態でなくなり、瑞枝は以前フリーライターの仕事をしていた事もあり、脚本家として生計を立てている。
 その瑞枝に、バブル期に華やかな生活を送った男女を書くよう、TVドラマ脚本の依頼が来る。内心、葛藤があったものの、引き受けた瑞枝は、当時、親しくしていた夫の取り巻きたちを取材しようとするが…。

 バブル期ってのは、だいたい1985年から91年と定義されるようだ。
 私は地方都市に住んでいるし、その頃は子育ての真っ最中だったので、恩恵を受けた覚えはないが、ニュースでは、株価は3万8900円まで上がり、証券会社の女子新入社員が、何百万円ものボーナスをもらったという話も聞いた。
 都市部の住宅価格がべらぼうに高騰。特に首都圏では、億ションが当たり前、東京都心では5億10億のマンションだってザラだったみたい。
 ワンレン、ボディコンの美しいお姉様方が、ディスコ(今はクラブっていうの?)のお立ち台で扇子を持って踊りまくり…。


 小説の中で、瑞枝の書いた脚本では、あまり視聴率が取れず、プロディーサーに書き直しを命じられ、当初の意図とは違うサスペンスものになってしまう。
 それと同じことが、林真理子がこの「ロストワールド」を書く時にも、起きたのかなぁ。
 最初の方は面白かったが、半ば過ぎから、やたら恋愛モードになってくる。37歳の瑞枝が、うんと年下の若手俳優と、元夫の友人だった売れっ子建築家から求愛されるのだ。SEX描写もけっこう出てくる。

 この「ロストワールド」は、読売新聞に連載されていて、読者の反応が良くなかったので、恋愛要素をたっぷり入れて、起死回生を図ったんだろうか? 担当者と一緒に。
 そんなふうに疑いたくなる作品です。

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