ケイの読書日記

個人が書く書評

東野圭吾「超・殺人事件 推理作家の苦悩」

2014-03-01 15:39:24 | Weblog
 これはミステリというより、出版界の裏事情をおちょくった中編8作品。
 私は、特に『超高齢化社会殺人事件』が気に入った。

 若者の活字離れと言われて久しい。
 人気作家は、固定ファンをつかんで、その読者たちと一緒に年をとっていく。若い人は読まない。新しい作風を!と勢い込んで冒険するより、マンネリと言われようが、同じようなパターンの作品を量産していった方が、出版社にとっても、ありがたい。
 
 例えば、この『超高齢化社会殺人事件』に登場する、敷島清彦は90歳の現役推理作家。
 だいぶボケてきて、連作推理小説の探偵が、3回目と4回目で違っていたり、殺された人が、次の回では、ぴんぴんして御飯を食べていたり…つまり、作家の頭の中が、そうとうカオスな状態なのだ。
 これはマズイと思った編集者が、かってに書き直し、つじつまを合わせ…でもその努力にもかかわらず、ちっとも辻褄が合っていないのに、長年のファンは喜んでそれを買って読む。
 読者も、読んだ端から忘れていくので、整合性なんて、どうでもいいのだ。

 つまり、作家も高齢化、担当編集者も高齢化、読者も高齢化が進み、三位一体でボケているので、万事めでたしめでたし。


 それから、もう1作品。『超長編小説殺人事件』も面白かった。
 最近の本って、どうしてレンガみたいに分厚いの? と思ってる人、多いだろう。これって出版社の要請なんだってね。
 情報小説としての価値があるって、作家をおだてて、どんどん水増しする。
 確かに、京極堂シリーズとか、矢吹駆シリーズとか、毒草師シリーズとか、刀城言耶シリーズとか…60%くらい、うんちく話じゃない?(民俗学うんちく話の刀城言耶シリーズは、興味があるから喜んで読むけど)
 ハードカバーを値上げしたいが、さすがに同じページ数では値上げできない出版社と、ページ数を多くして原稿料をたくさんもらいたい作家の、両方の利害が一致したって事?
 
 やめてほしい。バックに入れて持ち歩けないよ。

 

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