ケイの読書日記

個人が書く書評

角田光代「幸福な遊戯」

2009-09-01 15:10:54 | 角田光代
 表題作「幸福な遊戯」は、角田光代のデビュー作らしい。しかし、私はどちらかと言うと表題作よりも「無愁天使」の方が印象深い。

 母親が死に、多額の保険金を手にした一家(父親、長女、次女)が、買い物依存症→片付けられない症候群に陥り、家庭が崩壊していく様を描いている。

 父は会社をやめ、バカ騒ぎの果て、長期の旅行に出る。妹は同棲相手のマンションに転がり込み、カードを使って買い物をしまくっている。

 ただ一人、家に残った姉は、物で一杯で足の踏み場が無い家からデパートへ出掛けては買い物をし、ますます家の中を物で一杯にしている。

 一時、買い物依存症に陥った中村うさぎがエッセイの中で書いていたが、ブランド品のバ-ゲン会場に行くと、クスリをやっている訳でもないのに、物すごくハイな気分・高揚した気持になるんだって。
 すべての商品が、自分に向かって「買って、買って」とウインクしている様に見えるらしい。 
 この小説の主人公もそう。デパートの中の色んな色彩が自分を呼んでいるんだそうだ。

 買い物依存症の人は、買うという行為に発情するのであって、買った商品に対して、愛情は抱かない。箱から、袋から取り出しもせず、昨日買った商品の上に、それらを放り投げる。

 この長女は、にっちもさっちも行かなくなり、その物が溢れかえって床や廊下が見えない乱雑な家から脱出し、アパートを借りる事にする。

 そんな金があるんだったら業者に頼め!! まずリサイクル業者に来てもらってブランド品を買い取ってもらい、次にハウスクリーニング業者を呼ぶのだヨ!
コメント
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