ケイの読書日記

個人が書く書評

岸本葉子「自問自答」

2010-08-18 11:09:21 | Weblog
 帯に「微妙なキマジメさが笑いを誘う、岸本ワールド全開のエッセイ集」と書かれてあったが、やっぱり同じようなユーモアを、皆も感じるんだね。

 そう、岸本さんのエッセイは、ほんわか面白い。大笑いするわけではないがクスっと口元が緩んでしまうのだ。

 例えば『お弁当持って』というエッセイの中の文章を抜粋してみる。


 「小型の風呂敷のような布に包まれたお弁当を、おもむろに鞄から取り出す。
  このときが、かなりいい気分。
  予定どおり、持ってくることができた達成感。お弁当なんていくらでも売っているのに、楽さに流れなかった自分への肯定感。
  詰められる残り物があるのも、日頃より家で作っているからこそ。そのように自分を律する健康的な暮らしの出来ている満足感(それが普通?)
  買ってきたお弁当の蓋を今まさに取っている人も、体のことを考えれば、家で作ったのを食べたいはずで、もしかしたら羨望を集めているかもという優越感(この辺になると全く根拠なし)」

ね、お弁当一つで、ここまで幸せになれる人って、少ないでしょう?

 性的に奔放だという事をウリにしている女性作家が多い中で、岸本さんのこのすがすがしさを見よ!! と声を大にして言いたいです。
コメント
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