ケイの読書日記

個人が書く書評

大塚ひかり「本当はひどかった昔の日本」

2014-10-02 09:40:54 | Weblog
 すごく面白くタメになる。「古典文学で知る、したたかな日本人」というサブタイトルが付いている。そうだよね。昔は良かった、なんて過去を美化するけど、そんなわきゃ、ねぇだろーが!

 筆者の大塚ひかりさんは、三度の飯より古典が好きで、中学校の頃から、がつがつ読んできたそうな。現在は、古典エッセイストとして有名。彼女の本を読むのは初めてだけど、大塚ひかりの名前だけは知っていた。

 
 捨て子、育児放棄は当たり前、本当はもろかった昔の家族(江戸時代なと、離婚率は現代の数倍)
 娘を売って遊びほうけている親といった毒親だらけ(近松の作品には、そんな親ばっかり)
 リアル奴隷の悲惨(『山椒大夫』って、本当はものすごく残酷な話なんだ)
 などなど、ああ、現代に生まれて本当に良かった!と思う事ばかり。
 江戸時代になっても『病人を捨てるな』というお触れが出ているという事は、実際、病人を捨てるという行為が横行していたという事で、ほとんどの病人が、道に捨てられ、野良犬に食われていたらしい。


 特に印象に残ったのは、第九章「昔もいた?角田美代子 家族同士の殺戮という究極の残酷」
 尼崎の角田美代子事件。本当に怖かった。自分がもし、この事件の裁判員に選出されたら…悪夢にうなされそう。ただ筆者は、この角田美代子タイプの人間は昔にもいて、例えば北条政子なども、このタイプじゃないかと書いてある。
 うーん、確かに。支配欲が異常に強いんだろうね。
 北条政子は、夫や子どもに愛情はあっただろうが、それ以上に、支配欲・権力欲が強かった人なんだろう。

 それと、第十四章「究極の見た目社会だった平安中期」という章も、インパクトがある。
 この中で、「顔の醜い先生から漢文を習いたくない」という東宮(皇太子)が登場。この時代「美醜は前世の善悪業の報い」という『法華経』の思想が、広く浸透していた。「美人」=「前世の罪が軽い」  「醜い人」=「前世の罪が重い」  という考え方なので、醜い人に対するいじめはすざましく、身分の高い人(例えば天皇の孫)などであっても、容赦なく笑い者にしていたとか。


 他にも、光源氏の話なども、たくさん出てくる。それも否定的な見方で。だって筆者は『源氏の男はみんなサイテー』というタイトルの本も出版しているらしい。
 サイテーというか…光源氏って、現代だったら、完璧に性犯罪者だよね。
 
コメント
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