私達が見る睡眠時に見る夢の機能の一つは、
現実の世界で満たすことが出来なかったことを、
夢で体験することで欲求不充足状態を解消し、
心のバランスをとるための調整機能の働きをしていると言われています。
昼間に我慢したアイスクリームを食べる夢を見るのように、
幼い頃に見る夢は直接的な夢を見ると言われていますが、
どういう訳か成長するにつれてみる夢は抽象的なものへと
変わって来ると言われています。
この抽象的な現れは、欲求不満を解消するためだけに限らず、
不安感や罪悪感などが解消されないままでいる場合にも、
その気持を直接的な映像ではなく、抽象的な映像として見ることがあります。
この理由については、様々な考えがあるようですが、
その理由の中の一つに、ダイレクトに不安感や罪悪感を感じないように、
抽象的な映像で見ることで辛さや苦しみを軽減するための機能として、
働いているという考えがあります。
そして、夢以外においても
時に脳が持つこのような働きが機能することがあります。
以前、私が担当した方のケースで、
地面や床や壁、とにかく身につけるもの以外の何かに触れると、
その身体の個所の細胞が壊れ身体が腐っていくと言う不安と恐怖を何とかしたいと、
相談に訪れた方がいました。
そのような不安や恐れを持ち始めてから、
その方は地面に触れていますし、その他のものにも触れていますから、
その考えや気持ちが真実ならば、もうとっくに多くの細胞が壊れて、
足にも手にも異常が起きているはずですが、
当然、身体のどこにもそのようなことが起きてはいません。
まず、そのことについて話し合うことから始めたのですが、
この方の不安や恐れを解消するためには、
「何度となく身体が触れて、そして細胞が壊れていないという結果は、
これからも身体が壊れることがないことを証明していると考えることが出来ませんか。」
と言うようなポイントでカウンセリングを進めても解決には結びつきません。
このような話は、私のところに来る前に何度となく医師などに相談し、
また、近親者から同じ内容の話を聞かされ、説得されているはずで、
それでもなお、不安と恐怖が消えずにいる訳です。
そして、何とかしたいとカウンセリングに訪れている訳ですから、
また、同じ話をしても意味がありません。
この不安や恐れは、細胞が壊れていくこと起きているのではなく、
本当の不安や恐れの原因は、別の所にあります。
夢で言うところの、形を変えている状態なのです。
この形を変えた実態でない所を扱っても効果を得ることは出来ません。
元々の不安や恐れの感情の原因があり、その原因と正面切って向き合い続けることが、
本人にとって負担が大きいものである時、
やがて、心は実際の対象とは違う対象物に向けることで、
心の負担を軽減していると思われます。
平たく言えば、過剰な苦しみによって混乱しているとも言えます。
この方の施療は、とても上手くいき6回の施療で解決をしました。
最低でも半年、もしかすると一年以上の施療は必要かと予想していたのですが、
この驚くほどの短期間での改善は、その方の心の柔軟さ、聡明さ、知力の高さ等も、
大きく関係したと思われます。
そして、この施療は、その強烈な不安や恐れが、
身体が腐ると言うことから起きているのではなく、
真の原因から来ているということを伝え、気付いてもらい、
施療の焦点をそちらに向けてもらうための働きかけを、
早すぎず、遅すぎることなく、
的を射抜くようなタイミングで踏み出せるかが、
この方の施療の一番のポイントとなりました。
催眠療法&心理療法 神戸ストレスカウンセリング・ルーム花時計