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不平等の上に成り立つ平等

2016-03-25 19:58:10 | 徒然

ベルギーで起きた連続テロ。
犯人のうち2人は、自爆をし1人は逃走中。新たに、関与をした5人目が浮上している。
このようなテロ事件が起きるたびに、世界各地では「憎しみの連鎖を断ち切り、祈りをささげる」と言われているのだが、昨年起きたパリの同時多発テロ以来、収まる気配がない。

もちろん、「イスラム国」と名乗るダーイッシュによるテロ行為であり、許されることではない。
ただ、もう少し視野を広げて考える必要があるのでは?という、気もしている。
それは、欧米で言われる「自由・平等」は、すべての人に与えられていることなのだろうか?という点だ。
米国では、いまだに黒人に対する差別が、横行している。
それは年に何度か日本でも報道される、白人警官による黒人男性への暴行死事件などから、知ることができる。
キング牧師が訴えた「I HAVE A DREAM」という演説以来、40年以上の月日が流れ、アフリカ系の黒人大統領が誕生した今でも、変わってはいない。

欧州であっても、それは同じだろう。
欧州の場合は、かつての統治地域出身者やイスラム系になる。
欧州の「自由・平等」というのは、かつての統治地域出身者やイスラム系に対する不平等の上に成り立つ「自由・平等」なのでは?という、気がしているのだ。

というのも、先日、朝日新聞に掲載されているトマピケティの、欧州に根強くある差別や偏見についてのコラムを読んだからだ。
朝日新聞:ピケティコラム 欧州社会の差別・偏見「イスラム嫌い」の衝動 抑えよ
WEBでは、書き出し部分程度しか紹介されていないのだが、経済学者であるマリアンヌ・バルフォール氏が「イスラム教の家庭出身者の若者が、職業上の差別をどれほど受けているのか」という調査が紹介されている。
「イスラム風の名前(男性)」で求人に応募した場合と、一般的な欧州風の名前とでは、面接の返信割合はわずか5%以下になってしまう。それ以外では20%近い返信があることを考えると、イスラム風の名前を持った男性は、一般的な欧州の名前の男性よりも、随分差別をされていることになる。
それは、いわゆる「高学歴、有資格者」などの好条件を備えていても、同じ結果だったという。
同じような内容を、ピケティと同じフランス人であるエマニュエル・トッド氏も、自著の「ドイツ帝国が世界を破滅させる」で書いている。

昨年のパリ同時多発テロの時、切っ掛けとなったのは「風刺漫画」だった。
イスラム教(およびイスラム教徒)を風刺していることに対する、テロだったと言われている。
テロそのものは、上述した通り許されることではない。
しかし、自分たちが差別や偏見を持っている相手に対して「風刺をする」というのは、「風刺」とは言えないのではないだろうか?
あくまでも「風刺」というのは、権力を持った相手に対して行うことだとすれば、風刺をした側の傲慢さという気がしてくる。
その傲慢さは、自分たちの「自由や平等」が、彼らに対する不平等の上に成り立っている、という認識をもっていないからなのではないだろうか?

欧州における「イスラム教徒およびイスラム系家庭」出身者からすれば、今の欧州の「自由と平等」は自分たちに対する不平等の上に成り立っている、という不満がダーイッシュへと走らせるのでは?という、気がしてくるのだ。

日本でも「格差」という問題が、あらわになりつつある。
「すべての人が平等に扱われる社会」というのは、理想であり現実として難しい。
しかし、それを目指していかない限り、形を変えた「テロ」が起きる可能性はあり続けるような気がするのだ。