この春から「電力の自由化」が、始まる。
これまでの「電力会社」だけだったのが、ガス会社や通信会社、コンビニまでもが参入する予定になっている。
最近では、「抱き合わせ販売」のように、電力だけではなく様々なサービスと組み合わせて、ポイントアップを謳い顧客獲得を目指しているようだ。
一方忘れてはならないことがある。
5年前に起きた「東京電力福島第一原子力発電事故」だ。
東日本大震災で、東北全体が大打撃を受けた。
5年が経過し、徐々に復興への道筋ができ始めた地域もあるようだが、復興どころか故郷へ帰ることすら、できずにいるのが、「東京電力福島第一原子力発電事故」で避難を余儀なくされた人たちだ。
原発事故の原因は「人災である」という指摘がされる中、一時期停止されていた原発が再稼働の動きが出てきている。
再稼働の大きな理由は、「電力の安定供給」ということになっているのだが、その実この5年間で消費電力そのものは、減り続けていると言われている。
省エネ生活が、一般家庭だけではなく企業などでも「当たり前」になってきている、ということもあるだろうし、家電メーカーの「省エネ製品」の技術の進歩や充実などによるところも、大きいだろう。
エアコンや冷蔵庫のように、消費電力の大きな家電製品はボーナスシーズンになると「買い替需要期」として、量販店が得に力を入れるようになった。
そのような様々な努力の上で、消費電力が減り続けている、という現実を見たとき、本当に原発の再稼働は必要なのだろうか?という議論が起きても良いはずだと思う。
ところが、そのような議論が起きる前に「電力の安定供給」という言葉だけが一人歩きをし、この春「電力の自由化」が始まろうとしているのだ。
とすれば、私たちができることは「原発を稼働させている電力会社から、電力を買わない」という、ことかもしれない。
事故処理がままならぬ状況の中で、黒字経営をしていることは、本当に被災地にとってメリットのある「経営」なのか?という、ことを考えるきっかけになるのでは、ないだろうか。
「電力の安定供給」という、意味そのものも考えなおす時期が来ているのかもしれない。
というのも、すでに携帯電話(スマートフォン)などでは、充電不要という発想の製品づくりが始まっている。
これも災害時に充電することができず、困った人たちが多くいたことから、このような発想が生まれ製品化への動きとなっている可能性はある。
さすがに、エアコンや冷蔵庫などが「自家発電型家電」となる可能性はないと思うが、蓄電の技術などの向上が期待されていることを考えると、「電力の安定供給」という発想そのものの意味が変わってきて来る。
「東京電力福島第一原子力発電事故」は、暮らしと電力の関係を見直すきっかけとなった。
そして多くの生活者の行動は「原発に頼らない暮らし」へと変わってきている。
そのコトを、電力自由化とどうマッチングさせていくのか?
「東京電力福島第一原子力発電事故」から5年。
変わらなくてはならないのは、「今までのような電力消費が期待できる」という発想の、電力事業者だと思う。