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「本音=真実」なのか?トランプ氏の今後

2016-11-17 23:29:00 | アラカルト

米国の大統領選が終わって、約1週間が過ぎた。
今日の朝日新聞に、フランスの社会学者・エマニュエルトッド氏のインタビュー記事が、掲載されていてとても興味深く読んだ(有料記事のため、ブログ内では紹介できず)。

見出しには「真実を語っていたトランプ氏」とある。
確かに、トランプ氏の発言には「真実」があったのだろう。
それは、トランプ氏支持者の「不満」という点だ。
拙ブログでも何度か指摘させていただいたのだが、トランプ氏の中心的支持者というのは「ラストベルト(=さびついた地帯)諸州」の保守的な人たちだった。
それらの地帯は、破壊された古い製造業の地域でもある。
実際、トランプ氏の次期大統領が決まってから、古い製造業とは全く関係のない(と言っては変だが)カリフォルニア州では「独立運動(というべきか?)」が起きているという。
カリフォルニア州と言えば、シリコンバレーをはじめとするIT産業の中心地で、経済的にも恵まれた州だ。
もちろん、もともとカリフォルニア州は民主党が強い州で、リベラル派が多いとは言われているのだが、そのような産業構造の違いが、支持者の不満の違いということになるのかもしれない。

ただ、今回トランプ氏を支持層の不満の多くは、同じ共和党出身のレーガン氏の「レーガノミックス」が原因となっている部分も大きい。
産業構造そのものの転換ができなかったのは、確かに企業が時代を読み取る力がなかった、ということにはなるのだが、富裕層や企業を中心とした優遇政策を推し進めたのは、共和党だった。

話がそれてしまったが、トランプ氏が不満層の「真実を語った」ことが、トランプ氏への支持につながった、というのがエマニュエルトッド氏の考えである。
本当にそうなのだろうか?
むしろ、トランプ氏の「演技」だったのでは?という気がしているのだ。

トランプ氏の予備選からのスタイルは、「支持者の不満の多くの原因は、支持者に問題があるのではなく、奴ら(話の内容に合わせ、民主党や移民に代わる)のせいだ!奴らを野放しにしていることが間違っている。そうだろう!?」という、敵をつくりやり込める、という方法だった。
「自分たちは、悪くない」ということを、言ってきたような印象を持っている。
それは果たして「真実」なのだろうか?

本当は支持者は「不満を共有できる仲間が欲しく、その代表がトランプ氏」であった、「本音」ということなのでは?
それはトランプ氏自身がよくわかっているのだろう。
この1週間で、随分「現実路線」的な発言が、増えてきている。
問題は、この「現実路線」を打ち出すことで、支持者は「裏切られた」と感じるのでは?
トランプ氏は、予備選から大統領選に至るまで、首尾一貫「不満を共有できる仲間」として、戦ってきた。
それが方向転換しはじめた時、支持者はどうするのだろうか?