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「危機管理のお手本」‐台湾とドイツ‐

2020-04-22 14:51:40 | ビジネス

日経ビジネスに興味深い記事が掲載されていた。
日経ビジネス:新型コロナ最悪シナリオを8年前に想定したドイツの危機管理

記事を読むと、2002年に中国南部の広東省から感染が始まった「SARS」及び「SARSの変異型」を想定した、「危機管理マニュアル」のようなものをドイツでは作成していたようだ。
それから少しづつ準備をしていたのだろうか?人工呼吸器付きのICUの病床数が2万5千床あったという。
10万人当たりのICUの病床が、約30床ある。
日本に至っては、なんと5床しかない。おそらく都市部ではもっとあるとは思うのだが、地方に行けば行くほどICUなどの設備が無い病院が多いということだろう。
その点では、病院設備における「地域格差」がある、ということになる。

話はそれたが、これだけの用意をしていながらドイツでは感染者数も死亡者数の決して少ないわけではない。
ただPCR検査の実施数などを見る限りでは、「グレーの感染者も検査する」ことで「新たな感染者を把握し、症状によって振り分け、患者と病院の負担を減らす」ということをしていたようだ。
日本のように「グレーかもしれない」という患者さんが、不安におびえながら自宅待機をしている状況とは、大きく違う。
最初に「保健所」を指定したことで、「グレーかもしれない人」までの対応ができず、逆にある程度の症状が発症してからの対応になるため、今度は病院での感染拡大リスクが増えている、という可能性もあるのではないだろうか?
何より、このような対応になれていない「保健所」の方たちにとっては、肉体的にも精神的にも負担が多い、という状況になっているような気がするのだ。

また、これだけの事前準備があったために、「緊急支出」するお金を病院設備などではなく、他の社会保障や様々な業種への支援金の表明ができたのでは?という気がしている。

「新型コロナウイルス」に対する「危機管理」という点では、やはり台湾を上げなくてはならないだろう。
台湾も「SRAS」の感染によって、事前に「感染症拡大防止策」が練られていた、といわれている。
その効果は、感染拡大する国が増えていく中で、感染者数だけではなく死亡者数なども諸外国に比べ、圧倒的に少ない。
台湾の場合は、「中国で肺炎で亡くなる人が増えている」という情報が出始めた頃に、中国からの入国を禁止し中国への出国も禁止したように記憶している。

台湾の場合は「いかに国に感染発症国から入国させないか」ということに力点を置き、初期段階での感染拡大を封じ込める、という方法を取った。
他にも、市民がパニックにならないように「マスク」等の販売に規制をかけると同時に、買いやすいようにネット上で「マスク情報」を提供する等、市民が「新型コロナウイルス」による不安感を取り除く、ということい力点を置いていた。
中国が感染源だと分かっても、なかなか「感染ルートを断ち切る」という決断はしにくい。
「政治的対立がある」といっても、経済という面では往来があっただろうし、元々は「一つの民族」という考えを持っている市民も少なからずいるはずだ。
そのような複雑な背景がありながらも、「感染ルートを断ち切る」という決断は、相当勇気のいることだったはずだ。
逆に言えば「SRAS」の時の反省から、初期対応を徹底することで「感染拡大」を防ぐことに成功した、ということになるだろう。

「危機管理」という言葉は、何気なく使われることばだが、ドイツのように長い時間をかけ「準備をする」ことで、「危機的状況」になった時、支援を一番必要としている人に素早く対応し支援することも「危機管理」の一つだろうし、台湾のように「初期段階による危機管理」という考え方もある。
ドイツと台湾の「危機管理」には、学ぶべき点は多いように感じる。