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LVMHによる、ティファニー買収撤回の理由はどこにあるのだろう?

2020-09-10 20:46:15 | ビジネス

昨夜、LVMH社によるティファニー買収が撤回された、というニュースがあった。
日経新聞:LVMH、ティファニー買収断念、米関税背景と説明

LVMH社がティファニーを買収する、というニュースが報じられた時やや懐疑的な印象を持っていた。
LVMH社といえば、これまで以前のような勢いがなくなった高級ラグジュアリー・ファッション・ブランドを次々と買収し、ブランドを立て直しをしてきた。
これまで買収してきたブランドの数々が、フランスをはじめとする欧州のファッションブランドであったことから、米国のジュエリーブランドの買収には、何か思惑があるのでは?という、気がしたからだった。

買収の話があったのが、昨年11月でそれから10カ月経過して突然の撤回、というのもLVMH社側が発表した通りの理由なのかやや疑問を感じる。
記事にある通り、ティファニー側は「早く買収完了をして欲しい」といっているのに、LVMH社側は「関税」を理由にしている。
買収内容が分からないので、米国のフランス企業に対する追加関税とはどのようなモノなのか分からないのだが、年が明ければ米国の追加関税がなくなるとは思えず、どこか腑に落ちない内容となっている。
まして、フランス政府が「買収完了を伸ばすように」と働きかける、というのも、不思議な気がする。
このコトに関しては、Bloombergが興味ある記事を掲載している。
Bloomberg:ティファニー買収撤回、LVMH会長が政府に協力要請か-関係者

LVMH会長のアルノー氏が個人的に仏政府の経済・財務省に通商摩擦の進捗状況を知りたい、と助けを求めたが断られ、外務省に協力を求めた、という内容だ。
「通商摩擦」という点から考えれば、やはり「追加関税」がいつ行われるのか知りたい為に、仏政府に働きかけたということになると読み取れるのだが、買収前であっても買収後であってもティファニーという企業を買収した限りは、どこかのタイミングで「追加関税」という問題が出てくるはずだ。
何より、ティファニー側は「買収完了」を急いでいると言われているにもかかわらず、LVMH社側はティファニーが買収を伸ばして欲しいと言っている、という行き違いまで生じている。

とすれば、LVMH社側にとってティファニー買収のタイミングは今ではない、と判断したのではないだろうか?
上述した通りティファニー側は「買収完了」を早くしたい、といっているのは資金繰りなどの問題があるのでは?と、想像が付く。
逆に「伸ばしたい」といっているLVMH社側も、今回の「新型コロナウイルス」の世界的感染拡大により、傘下ブランドそのものの売り上げが低迷しているのでは?という、気がするのだ。

LVMH社が傘下に収めているブランドの数々は、高級ラグジュアリー・ブランドであるがために、ECサイトなどの展開はできない。
何故なら、店舗で購入する時に提供される高いおもてなしやその店舗空間そのものもまた、ブランドの一部だからだ。
それがECサイトのように、PCやスマホで「ポチ」としてしまっては、ブランド価値そのものが無くなってしまう。

ところが「都市封鎖」や「旅行を含む人の移動」が制限されてしまったことで、LVMH社全体の売上が急激に落ち込んだということは、十分考えられる。
特に中国を中心としたアジアの市場での落ち込みは、ティファニー側にとってもLVMH社側にとっても、大きかったのではないだろうか?

そう考えると今回の買収撤退の背景にあるのは、「新型コロナウイルス」の世界的感染拡大による経済的問題のような気がするのだ。
と同時に、グローバル企業だからこそダメージも大きかった、と考える必要があると思う。