先週末、米国のトランプ大統領が「新型コロナウイルス」に感染した、というニュースがあった。
トランプ大統領が、「新型コロナウイルス」の陽性反応が出る前、大統領のスタッフが感染したという報道があり、トランプ大統領への感染が懸念されていた。
そして、やはり!というか、当然というべきかメラニア夫人を含む、大統領周辺の人たちが「新型コロナウイルス」に感染していることが判明した。
当初、トランプ大統領はホワイトハウスの執務室で、仕事をしているという写真を公表し、「新型コロナウイルス」に感染しても大丈夫、私は問題ない、というアピールをしていた。
それから間もなくして、ホワイトハウス内で隔離治療となり、その数時間後ヘリコプターで陸軍病院へと搬送された。
陸軍病院で、どのような治療を受けているのかは不明だが、「酸素呼吸器をつける治療を受けている」とか「ステロイド剤を使用している」(後で、ステロイド剤による治療には、酸素呼吸器をつける必要があることが判明した)という報道もあった。
ところが今日になり、その陸軍病院周辺に集まってきた支持者向けに、黒いマスクをつけ、車から支援者に手を振るという、行動が報じられた。
それだけではない。米国時間の5日には、陸軍病院を退院する、という報道もある。
酸素呼吸器をつけステロイド剤を投与されるような患者が、数日で退院できるのか?という、疑問がある。
この分野の専門家ではないし、医療についての知識があるわけではないが、陸軍病院に運ばれてから2,3日で退院できるほどの軽い症状だったのだろうか?
とすれば「ステロイド剤」や「酸素呼吸器」の使用というのは、何だったのだろう?という、疑問が残る。
これまでトランプ氏に限らず、共和党の大統領候補は「タフ・強い」というイメージ戦略の選挙戦を繰り広げてきた。
レーガン大統領や、ブッシュ親子大統領などは、典型的な「強いアメリカ・タフなリーダー」というイメージ戦略をし、成功させてきた。
同じ共和党のトランプ大統領が、「強いアメリカ・タフなリーダー」というイメージ戦略をするのは、当たり前と言えば当たり前のことなのだ。
西部劇に出てきそうな「強いアメリカ・タフなリーダー」というアピールをすることで、トランプ大統領の「健康問題」を避けたいということもあると思う。
事実、ホワイトハウスで最初に受けたPCR検査結果が、陽性だったにもかかわらず公表をしていない。
それだけではなく「新型コロナウイルス」に関するトランプ大統領の発言は、事の重大性を理解しているとは思えないようなばかりで、「タフなリーダーである自分は、新型コロナなどには感染しない」とまで、言いそうな雰囲気だった。
しかし、トランプ大統領自身が開いた集会などで「新型コロナウイルス」のクラスターが発生し、自分も感染したとなれば、それまでの「タフなリーダーである自分」のイメージが、大きく崩れてしまう。
そう考えたからこそ、今日クルマに乗り、病院周辺に集まった支持者に「元気」アピールをする必要があったのではないだろうか?
だが、トランプ大統領本人の考えと社会的評価は、随分違っているようだ。
朝日新聞:「これは狂気だ」車列で外出のトランプ氏を医師が批判
おそらく熱狂的なトランプ支持者以外の国民は、批判をした医師と同じことを思っているのでは?
トランプ大統領とすれば、医師のいうことよりも、自分の支持者の前で「元気アピール」をすることの方が、大事なのだと思うのだが、このような無理やり「元気、タフなリーダー」のイメージ戦略は、成功したとは思えない。
何故なら、車の窓越しとはいえ、黒いマスクをしている姿は「元気」とは思えず、車列を組まされた運転手や護衛の人たちにまで、感染のリスクを負わせたからだ。
余りにも「自分」のことしか考えられない、リーダーはタフでも強いわけでもなく、単に人の話が聞けない我ままな人、というイメージを逆に与えてしまったのではないだろうか?
その意味で、今回の車列を組んでの一瞬の外出は、大統領選を前にしてイメージダウンになってしまった、のではないだろうか?