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日々是マーケティング

女性マーケターから見た日々の出来事

ネーミングで大切なこと

2020-10-06 20:54:25 | マーケティング

讀賣新聞のWEBサイトを見ていたら、興味深い記事があった。
讀賣新聞:秋田の新しいコメ名称6案、県議は「インパクトない」・・・知事「腹を切る覚悟で決めたい」

興味深かったのは、ネーミングについて県議の方が「インパクトがない」と指摘したことだ。
確かに、生活者の印象に残るということは、新商品において大事なことだ。
だが「インパクト=強い印象がもたれる」ということが、その商品において、良いわけではない。
一番大切なことは、その商品イメージとネーミングが合致することだ。

今回の場合、秋田県で生まれた新しい品種のお米だ。
とすると、大切なことは
1.新しい品種である
2.秋田で生まれたお米
3.新しい品種のお米と旧来の品種のお米の違い
4.長く愛されるネーミング(親しみが持て、子どもや高齢者にも言いやすい)
等のことを、勘案する必要がある。

確かに一時期「インパクトの強いネーミング」が、重宝された時代があった。
だが、「インパクトが強い」だけでは、商品はロングセラーにはならない。
特に今回のような「お米」の場合、日本人にとっての主食という点では「ロングセラー」になる必要がある。
その一方で、今や「嗜好品」的要素が、強くなってきている。

「嗜好品」というと、意外に思われる方もいらっしゃると思うのだが、消費量の減少とは裏腹に「料理に合わせてお米を選ぶ」という人達が、少しづつ増えている。
それだけ日本人の食生活がバラエティに富み、様々な食材調達がしやすくなった、ということでもあるだろう。
だからこそ、料理に合わせたお米選びをしたい、という客層が生まれ始めているのだ。

しかも今は「お米=保存性の高い」という時代ではなく、生鮮食料品と同じような感覚で、10日程度で食べきれるだけの量をお米屋さんで精米してもらう、という方もいる。
背景にあるのは、お米の保存環境が住宅環境の変化に伴い、劣化しやすくなった(=お米に虫が付きやすくなった)り、逆に冷蔵庫を保存場所にして「美味しいお米を食べたい」という、需要が出てきているからだ。

とすると、他の品種や県外で次々と誕生しているお米の品種との差別化が、必要になる。
県議の方が指摘するように、「インパクトが強い」ネーミングは、確かに覚えやすい。
覚えやすいが、そのネーミングと秋田の新品種のお米が、結びつかなけらば意味がない。
例えば、新潟の佐渡でつくられているコシヒカリ「朱鷺と暮らす郷」は、名前を見ただけで「あ~~、新潟の佐渡のお米だ!」と、気づく。
それだけではなく「朱鷺が住むようなところなら、自然豊かだからお米も美味しいだろうな~」と、想像することができる。
青森の「青天の霹靂」というお米は、お米の食味ランキングで「特A」を獲得したことから、つけられた名前だという。
関係者にとって、それほど「特A」ランクを獲得したことが、驚きだったのだろう。
と同時に「驚くほどおいしいお米なのだろうな~」と、感じることができる。

商品のネーミングは、上述したように「インパクト」よりも、その商品について生活者が想像できることが、とても重要なのだ。