WEBのみで展開している「コスモポリタン」に、興味深い記事があった。
コスモポリタン:私たちにできることは?ウイグル問題とファッションの関係性
雑誌としての「コスモポリタン」は、既に廃刊になっているのだが、WEBサイトでのみ記事が読めるようになっている。
雑誌形態の時には、過激?な内容で目をひくことも多かったような気がするのだが、米国コスモポリタンと契約をしている企業が変り、WEBサイトのみとなり一般向けの女性雑誌のようになった。
イメージとしては、日本のワーキングウーマン向け雑誌とファッション誌VOGUEの中間のような感じだ。
このような社会的問題とファッションを結びつけるような記事が、掲載することができたのも、雑誌形態ではないからだろう。
ところで「ウイグル問題」については、新聞などで報じられることはあるのだが、一般紙などでの扱いだけでは分かりにくいところが多い。
今回の記事では、中国の民族や宗教弾圧という問題にも踏み込んでいるという点では、なかなか読み応えがある。
そして意外に思われるかもしれないのだが、ファッションと人権的問題を結びつけるような記事は、年々増えてきているように感じている。
それは、ファッション産業そのものが、素材や縫製などで途上国と呼ばれる国々に依存している、という点がある。
途上国での問題の多くは、劣悪な環境の中、女性や子供が低賃金で長時間労働を強いられている、ということが問題となっている。
今回のウイグル問題と関係してくるのは、ファッション誌よりも通販カタログなどで目にすることが多い「新疆綿」がこのウイグル自治区でつくられているからだ。
「新疆綿」の特徴は、綿としての繊維が長く、しなやかで光沢のある綿織物、特にTシャツなどに使われる天竺と呼ばれる素材に使われることが多い。
今では「新疆綿」そのものが、ブランド化し高級綿素材として扱われることもある。
言わば中国にとって、大きな輸出産業の一つが「新疆綿」である、ということになる。
一方では、ウイグル族(中国そのものは多民族国家で、多くは少数民族であり自然環境の厳しい地域に住んでいる場合が多い)などに対する弾圧が年々厳しさを増している、という指摘が国際機関からされている。
そして表立っては言われていないのだが、随分前から中国はこのような少数民族を弾圧し、少数民族そのものの殲滅化(というと過激だが)を図っている傾向がみられる。
「三国志」等のように中国という国の成り立ちの歴史が、そのような政策を推し進める要因となっているのかもしれないのだが、その手段は荒っぽく、人権そのものを無視しているようなところがある、という海外からの指摘が再三されている。
それは、香港に対する統制などからも、わかるだろう。
ファッションに関する問題の中で、このように宗教や民族に関わる問題を取り沙汰されているのは中国くらいで、他の国々の場合は、上述した通り、途上国・劣悪な労働環境・長時間労働・就学世代の子どもを労働させているなどである、ということを考えると、ウイグル問題が、ファッション産業の中でも異質な問題である、ということが分かる。
そして今、世界中のファッション産業が「SDGs」や「エシカル」という方向に、動き始めている。
「ファッションもサスティナブルでなくてはならない」という、考えが広がり始めているのだ。
おそらくこのような傾向は、ますます広がり「ファッションの当たり前」になっていくだろう。
その時「あなたはワンシーズンで終わってしまうファッションを選びますか?人を犠牲にしてつくられる素材を選びますか?」ということも、問われるようになるのかもしれない。