Yahoo!のトピックスなどに、靴下の「アツギ」がSNS上で企画した内容が、炎上しているという記事があった。
Huffpost:アツギが「性的消費」と炎上。タイツを履いた女性のイラストで商品をPR
単なる商品のパッケージ写真だけなら、普通に見かけるモノなので「炎上」することはないと思ったのだが、「タイツの日」に合わせて描かれたイラストを見ると、「何だかな~」という感がある。
「性的消費」とまでは思わないが、どことなくタイツを履く女性に向けて描かれたイラスト、という印象は受けにくい。
特に、2枚目、3枚目のイラストは、「どこか男性が見て、カワイイ女の子」というイメージなのかな?という、気がする。
日本靴下協会の統計によると、ここ数年、女性のストッキングやタイツの需要が減少している。
靴 下 需 給 推 移 | |||||||||
単位 = 千デカ | |||||||||
暦 年 | 19年/13年 | ||||||||
項 目 | 2013 | 2014 | 2015 | 2016 | 2017 | 2018 | 2019 | (対比率) | |
輸入浸透率 | 87.2 | 87.3 | 87.3 | 88.5 | 88.5 | 89.6 | 89.9 | ||
短靴下 | 国内向け供給 | 137,088 | 134,393 | 132,171 | 130,929 | 129,767 | 132,943 | 124,124 | 90.5 |
輸 出 | 275 | 263 | 274 | 383 | 436 | 301 | 321 | 116.7 | |
輸 入 | 119,508 | 117,330 | 115,417 | 115,857 | 114,834 | 119,082 | 111,644 | 93.4 | |
国 内 生 産 | 17,855 | 17,326 | 17,028 | 15,455 | 15,369 | 14,162 | 12,801 | 71.7 | |
輸入浸透率 | 63.3 | 57.8 | 57.4 | 56.0 | 57.1 | 56.7 | 52.3 | ||
PS | 国内向け供給 | 33,965 | 33,778 | 31,506 | 28,314 | 27,693 | 28,350 | 26,121 | 76.9 |
& | 輸 出 | 462 | 433 | 524 | 633 | 530 | 490 | 352 | 76.2 |
T | 輸 入 | 21,507 | 19,538 | 18,098 | 15,850 | 15,804 | 16,077 | 13,669 | 63.6 |
国 内 生 産 | 12,920 | 14,673 | 13,932 | 13,097 | 12,419 | 12,763 | 12,804 | 99.1 | |
輸入浸透率 | 82.4 | 81.4 | 81.6 | 82.7 | 83.0 | 83.8 | 83.4 | ||
合 計 | 国内向け供給 | 171,053 | 168,172 | 163,677 | 159,243 | 157,460 | 161,293 | 150,244 | 87.8 |
輸 出 | 737 | 695 | 798 | 1,016 | 966 | 791 | 674 | 91.5 | |
輸 入 | 141,015 | 136,868 | 133,515 | 131,707 | 130,638 | 135,159 | 125,313 | 88.9 | |
国 内 生 産 | 30,775 | 31,999 | 30,960 | 28,552 | 27,788 | 26,925 | 25,605 | 83.2 | |
会員企業数 | 286 | 281 | 270 | 266 | 260 | 251 | 232 | 81.1 | |
単位:億円 | |||||||||
国内製造出荷額 | 942 | 845 | 844 | 807 | 804 | 770 | |||
注 : 国内向け供給 = 国内生産+輸入ー輸出 | |||||||||
輸入浸透率(%) = 輸入/国内向け供給×100 | |||||||||
出所 : 生産、会員企業数 = 日本靴下工業組合連合会調査 | |||||||||
輸出、輸入 = 財務省貿易統計 | |||||||||
国内製造出荷額= 経済産業省工業統計(1184 靴下製造業) |
日本靴下協会のデータの「PS&T」という項目が、ストッキングとタイツで、2019年のデータでは対比が76.9%にまで下がっている(Excelのデータが見にくくて、申し訳ない)。
通常のソックスが大きく減っていないことを考えると、単に人口減少というよりも、ストッキングやタイツを履く女性が減ってきている、と考えるほうが自然だろう。
実際、働く女性の服装がスカートからパンツスタイルに変わったことで、ストッキングやタイツを履く機会は、減っているのでは?と、実感する場面は多い。
だからこそ、アツギは積極的な販促策の一つとして「#ラブタイツ」というSNS企画を立ち上げたのだと思う。
「#ラブタイツ」という企画そのものには、問題が無かったと思う。
ただ何故、あのようなイラストを起用してしまったのか?という点なのだ。
そこには「女性がストッキングやタイツを履かなくなった理由」という、問題の根本を見ずに表面的な販促策を考えたのでは?という、気がしている。
そもそも「ストッキングやタイツ」は、女性が履くものではなかった。
タイツを履いた肖像画第一号(というと大げさだが)は、太陽王・ルイ14世だったと言われている。
その肖像画では、ヒールのあるパンプスにタイツ、ズボンではなくいわゆるブルマーと呼ばれる短パンを履き、肩からは豪華なケープを纏っている。
それが、産業革命によって男性は今のズボンを履くようになったのだ。
ズボンを履くということは、労働をする為の衣装だともいえる。
女性が、男性と同じように働くことが当たり前になりつつある今、スカートではなく動きやすいパンツスタイルが、一般的になってきている、というのは、当然と言えば当然のことなのだ。
だからと言って、靴下メーカーとして指をくわえて、売上が下がるのを見ているわけにはいかない。
とすれば、女性の特権である「ワーキングファッション」という視点で、どのようなレッグファッションとしてのストッキングやタイツを提案できるのか?という、視点が必要だったはずなのだ。
それを安直に「カワイイ女の子が履く、タイツ(という印象を個人的に持っている)」というイラストにしてしまったために、炎上してしまったのだと思う。
過去に企業が発信したSNSや広告が、炎上することが度々あった。
そのうち、いくつかは「生活者=ユーザーの気持ち」を置き去りにしてしまい、企業の思い込みや問題の本質を考えなかったためでは?と、感じるモノがいくつかあった。
SNSというこれまでとは違う、ある意味企業が直接発信でき、生活者と繋がる広告ツールだからこそ、生活者やユーザーの姿と問題の本質を見極める必要があるのではないだろうか?