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視聴率から再生回数へ?‐テレビの視聴スタイルの変化がもたらすこと‐

2022-12-26 17:22:47 | マーケティング

Yahoo!のトピックスに、興味深い記事があった。
「テレビの見逃し配信サイトによる”地域格差”」という内容だ。
Oricon News:『TVer』効果で、”地域格差”に変化・・・ローカル番組がネットで躍進、「本当に面白いものが選ばれる」テレビマンの覚悟   

この記事で取り上げられているのは、山陰中央テレビという、山陰のローカル局制作の「かまいたちの掟」という番組だ。
実は毎週ではないが、時折見逃し配信サイトで、視聴している番組の一つだ。
そもそも、キー局でもレギラー番組を持っているお笑いコンビ・かまいたちが、何故山陰中央テレビというローカル局の番組に起用されたのか?というと、お笑いコンビとしても面白いというところはあるが、かまいたちの山内さんが島根・松江の出身だからだ。
そのため、以前は山内さんの高校時代の同級生が、登場したこともある。
何より、ロケ地と出演される人などは、事前に決めてあるものの、番組そのものはかまいたちのお二人に任されている感が、楽しい番組だと思っている。

このようなローカル局制作の番組が、全国のローカル局で放送される、という現象は確かに新しい流れだと思う。
その流れを支えているのが、TVerなどの「見逃し配信サイト」ということになる。
実際TVerなどで見られるテレビ番組は、自分の住んでいる局やキー局で放送されている番組だけではない。
話題になっている他のローカル局制作の番組も、自由に視聴することができる。
それが「見逃し配信サイト」の最大の魅力、と言っても過言ではないだろう。

とすると、キー局でなくては制作できない番組というモノは、限られてくるかもしれない。
大がかりなロケーションを組、膨大な予算をかけて制作されるようなドラマなどは、キー局が有利かもしれないが、「かまいたちの掟」のような番組であれば工夫次第でローカル局の方が面白い番組が作れるかもしれない。

「見逃し配信サイト」が、テレビ局に与える影響はまだほかにもあるような気がしている。
今季話題になったドラマ「silent」の視聴率と「見逃し配信サイト」での再生回数の乖離だ。
確かリアルタイムでの視聴率は、10%にも達していなかったと思う。
ところが、「見逃し配信サイト」での再生回数は、フジテレビ過去最高を更新し続けたのだ。
このような状況になると、広告代理店などがスポンサーに対して提出する「広告枠資料」も、視聴率だけを見ていてはその「広告効果」を訴える事が難しくなっていくだろう。

このような「視聴率」と「見逃し配信再生回数」との乖離については、数年前から指摘されてきたと思う。
にもかかわらず、未だにメディアなどで報じられるのは「視聴率」中心だ。
「視聴率」と「見逃し配信再生回数」との差が大きければ、大きいほど「その理由」を把握する必要がある。
何故なら、「生活者のライフスタイルの変化」が起きている、と考える必要があるからだ。

先日の「タイパ=タイムパフォーマンス」を重視するような傾向がみられる中、「倍速視聴」ができないリアルタイム視聴の指標である「視聴率」そのものが、今の生活志向に合わなくなっている、とも考えられる。
話題になったドラマを「倍速視聴」しつつ、気になった場面を繰り返し視聴したりしているのかもしれないし、途中まで視聴し、次の場面をまたほかの時間に視聴する、ということもあったかもしれない。
「silent」というドラマそのものが、手話などを使ったドラマであったからこそ、何度も繰り返し視聴しなくては、視聴者側が十分な理解ができない、という要素もあったのかもしれない。

ただ「silent」に限らず、生活者が「テレビをリアルタイムで見なくては意味がない」と、感じる時代ではなくなりつつある、ということは間違いないだろう。
それを支えているのが「見逃し配信サイト」という、新しメディアであり、キー局のような縛りがないローカル局だからこそ制作できる番組を全国区に育てる事ができるのでは、無いだろうか?