日々是マーケティング

女性マーケターから見た日々の出来事

敗北者の心揺さぶられるスピーチ

2016-11-10 20:51:56 | アラカルト

トランプ氏が、次期米国大統領に決まった。
と同時に、ヒラリー・クリントン氏は敗北宣言をしなくてはならなかった。
これは、米国の大統領選における慣例のようなものだ。
そしてこの時の「敗北宣言」のスピーチほど、その人らしさを表すのかもしれない。
そう感じさせる、見事なスピーチだったと思う。

BuzzFeeⅾ:敗戦のクリントン氏が最後に語った最もパワフルな言葉「若い人に聞いて欲しい」

ネット上では、「もしこのようなスピーチが、選挙戦で聞けていたのなら、クリントン氏が勝利していたのではないか?」という、意見も出ているようだ。
実際、獲得した票はトランプ氏よりも、わずかながらクリントン氏のほうが多かった、という報道もある。
米国の大統領選独特の方法によって、得票数では勝っても負けてしまった、というのが今回の選挙結果だったということだろう。

同様の結果だったのは、民主党のゴア氏が共和党のブッシュ氏(「パパ・ブッシュ」ではなく、ご子息のブッシュ氏)以来のような気がする。
それだけに、悔しさが残る結果だったのではないだろうか?

しかし、クリントン氏は次期大統領に決まったトランプ氏への協力を明言し、祝福の言葉を述べている。
ラグビーでいうところの「ノーサイド」という、ことなのだろう。
その「ノーサイド」のメッセージよりも、より印象深くクリントン氏の信条や思いが伝わったのが、「若い人に聞いて欲しい」という言葉から始まるスピーチだ。

「正しいと信じることのために戦うことは、価値のあることです。やるべき価値のあることなのです。」という言葉には、単純な「勝ち・負け」では無い「信念をもって行動することの素晴らしさ」を問いかけ、若い人だけではなくすべての人々に訴えているように思える。

もう一つ、このスピーチで注目したいのは、「若い女性たち」に向けたスピーチだ。
今回の選挙の敗因の一つが「ガラスの天井」であった、と言われている。
「ガラスの天井」の意味は、ご存じの方も多いと思う。
女性がトップに上り詰めるだけの実力も実績もありながら、女性というだけで上り詰めることができない・・・椅子は見え、手に届くように思えるのにそれを遮る「ガラスの天井」がある。
そのような経験をしてきた女性は、数限りなくいるはずだ。
そのような経験をしてきたからこそ、若い女性には「ガラスの天井」を打ち破るような社会に変えていく力を持って欲しい、社会全体も変わってほしい、というクリントン氏の思いが伝わってくる。

全く同じ内容ではないが、10月クリントン氏の演説会に登壇したミッシェル・オバマさんのスピーチを思い出したのだ。
元々ミッシェル夫人は、夫であるオバマ大統領よりも優れたスピーチをする、と言われてきた。
そのスピーチ力をいかんなく発揮したのが、10月のニューハンプシャーでのスピーチだったと思う。
logmi:ミッシェル・オバマ大統領夫人がトランプ氏の女性蔑視発言を痛烈批判
トランプ氏の名前を具体的に上げているわけではないが、トランプ氏の女性蔑視発言が問題になっていた頃なので、トランプ氏への批判と捉えられるのは、当然なのだが、むしろ注目したいのは「これまで女性が受けてきた社会的蔑視や差別」という点を強調していることだろう。
それは「ガラスの天井」に対する不満というだけではなく、米国社会(だけではなく、日本においても)根強くある「女性に対する、古い価値観の押しつけ」や「暴力の肯定」という問題を話している点だろう。

いずれのスピーチも、心揺さぶられる名スピーチだと思うし、そのようなスピーチこそが多くの人を勇気づけると感じるのだった。




 


トランプ大統領誕生とイギリスのEU離脱は同じ?

2016-11-09 17:22:58 | アラカルト

今回のアメリカ大統領選挙は、前評判を覆した結果となったようだ。
この結果がアメリカ国民にとって良かったのか悪かったのかが、わかるのは4年後ということになる。

新しい大統領となる、トランプ氏は「アメリカファースト」を掲げ、予備選挙を戦ってきた。
大統領選に関しては、ヒラリー氏に対する個人攻撃に終始し、まともな政策・経済論争を避けたような印象しかないが、それも一つの「戦術」であったのだろう。

というのも、トランプ氏が掲げた「アメリカファースト」の内容は、「白人男性中流労働者層」という、とても限定的な支持層に向けられた内容が多かったからだ。
その一つが「移民問題」だろう。
トランプ氏が勝った州を見てもわかるのだが、トランプ氏が勝利した州の多くがこの「移民問題」を抱えている。
抱えているだけではなく、まさに「白人男性・中流労働者層」の共和党支持派が主流の地域だからだ。
「支持層=白人男性」と「白人男性」に限定しているわけではなく、一般的な社会不安を持っている「代表的な像」ということだ。

この支持層は、違法移民を含めた移民によって雇用不安を感じている層でもある。
「移民を締め出せ!」という、トランプ氏の言葉に一番共感できる支持層でもあるのだ。
それだけではなく、「白人中流労働者層」そのものが、減少していっているという事実がある。
その視点で考えれば、今までアメリカの主流派であった「白人社会」が少数派になり、黒人やヒスパニック系、アジア系などの「移民」が主流に転換する分岐点となるタイミングで行われたのが、今回の大統領選であった、ともいえる。
旧主流派となる「白人中流労働者層」が感じている「危機感」が、トランプ氏を大統領にさせた、と言えるのかもしれない。

今回の選挙と同じような感じが、今年の夏にもあった。
それは、イギリスのEU離脱だ。
国民投票をしたうえでの結果が、EU離脱だった。
しかし、離脱決定直後から「投票のやり直し」の運動が起き、イギリス国内での混乱を感じさせた。
この時も離脱を支持した層というのは、「今のEUに不満を持っている」というよりも、「イギリスに主導権がない」ことへの不満だったような印象があった。
「自分たちに主導権がない」ことへの不満が、EU離脱へと向かわせたでは?という、気がしている。

トランプ氏の政治・経済についての政策は、今のところ全く分からない。
何よりトランプ氏が、予備選で掲げた「アメリカファースト」を実行できるような、国際社会でもなくなってきている。
トランプ氏が掲げた「アメリカファースト」は、その実「白人・男性・中流労働者」という、限られた支持層に向けた内容でしかなかったからだ。
内向きな政治・経済政策では、「アメリカファースト」の政策にはならない。
そのことに、トランプ氏や支持層はいつ気づくのだろう?


アートイベント花盛りの陰で・・・

2016-11-07 20:10:34 | 徒然

昨日、東京の神宮で開かれていた野外イベントの展示物から火災が起こり、展示物内にいたお子さんが亡くなられた。
お子さんを助けようとした父親や他の方なども、やけどを負うという事故になった。
事故の原因は、解明されつつあるようだが、最近このような「街中を使ったアートイベント」が、全国で行われるようになってきている。
中日新聞: 「誤って白熱球点灯」男児死亡火災、作品内で発火か

おそらく日本で最初にこのようなイベントを行ったのは、新潟県の妻有の大地の芸術祭だったと思う。
切っ掛けは、新潟大地震の被災地復興を兼ねた町おこしだった。
この「大地の芸術祭」の成功で、瀬戸内海にある「直島」を中心にした「瀬戸内国際芸術祭」が開かれるようになり、
かつては産廃で覆いつくされていた豊島は、芸術の島へと変わっていった。
この芸術祭のスポンサーの一つが、ベネッセであるということをご存じの方も多いだろう。

このような地方の「街中芸術祭」が、徐々に人気となり、先月は「名古屋トリエンナーレ」が開かれていた。
この「名古屋トリエンナーレ」は、名古屋市内の中でもビジネス街や繁華街などを中心に展開をしていた「野外アート展」だったのだが、今回は愛知県下へと広がり、大がかりなアートイベントになった。
どれだけの集客があったのかは、不確かだが、会期終了後問題になったこともあった。
それは、古いビルに100羽の小鳥を放した「現代アート」作品の撤去だ。
小鳥という、生き物をアート作品に使っていたため、作品撤去と言っても殺すわけにもいかず、小鳥の貰い手を探すという騒ぎになった。小鳥の中には「飼ってはいけない鳥」もいたらしく、貰い手を簡単に探すわけにもいかず・・・という問題も起きた、という。

今回の事件とは、異質の問題ではあるのだが、「アート作品だから」という前に、「展示作品」として、どうなのか?ということも製作者は、考える必要があるのでは?という気がするのだ。
芸術作品に、常識を求めるべきではない、という説も十分理解できるのだが、作品に責任を持つという発想も必要なのでは?という気がするのだ。

野外での作品展示であれば、夕暮れ時にはどのように「作品を見せるのか?」という、ところまで考えたうえで「作品」として完成すると思うのだ。

そういえば、今年は伊藤若冲が生誕300年ということで、ブームになっているようだが、次の注目は仙厓義梵のようだ「ゆるカワイイ」ということらしい。
アートにもブームがあるようだ。


テレビドラマのネット配信で、変わるコト

2016-11-04 19:38:44 | ビジネス

10月から始まった、テレビドラマの視聴率についての話題も、一巡したと思われるこの頃だ。
その中で、「放送開始から回を重ねるごとに、視聴率が上がっている」と話題になっているのが、TBS系で放送されている「逃げるは恥だが役に立つ」だ。
TBS:逃げるは恥だが役に立つ

回を追うごとに視聴率が上がる、というのはドラマ制作者側にとっては、うれしいコトだと思う。
ただ「逃げ恥」の人気を創りだしているのは、決して視聴率だけではない、という気がしている。
というのもこのドラマが、人気になっている理由の一つがドラマのエンディングで流れる「恋ダンス」だと言われているからだ。
リズミカルでちょっとコミカルな?動きのダンスは、「私にもできるかも?」という、気にさせるだけではなく、自裁youtubeには「恋ダンス」を投稿する人が日に日に増えている(ようだ)。
しかも、小さな子供からダンス教室の講師?と思われる人まで、投稿し「恋ダンス」を楽しんでいる。
実際、公式サイトではドラマの次回予告の前に「恋ダンス」を見ることができる。

それだけではなく、放送から1週間は無料で視聴できるようになっている。
おそらくこのようなサービスは、TBSの他のドラマでもされているだろうし、他局でもされていることだろう。
この「放送から1週間、無料視聴」というのは、ネットならではのサービスだと思うし、このサービスはこれまでの「視聴率」という物差を変えるのでは?という気がしている。

これまでテレビ番組を視聴する方法というのは、2つしかなかった。
一つはリアルタイムで視聴する。もう一つは、録画をして後で視聴するの2つだ。
ところがこの「1週間無料配信」によって、リアルタイムで見るコトができなくても、録画をする必要は無くなり、「放送時間」に縛られることなく、テレビドラマを視聴するコトができるようになった、ということになる。

これまでの経験として、「録画をしたけど、結局見ることがなかった」という、経験はないだろうか?
録画がたまればたまるほど、視聴するための時間はかかってしまう。
そのための時間を作ること自体が、難しくなり結局「見なかった」ということになってしまうのだ。
それが、1週間という区切りはあるが、放送時間に縛られることなく、自分の好きな時間に視聴できるというのは、メリットが高い。
むしろ、1週間という時間が区切られていることで、次回の放送までに見ておこう!という、気持ちにさせることができるだろう。

このメリットは、視聴者側だけではなくドラマを放送する側にとっても、メリットがある。
「ネットで視聴する」ということは、視聴率よりも確実な「アクセス件数」を、知ることができるからだ。
TBSは当然、民放なのでネット配信であってもCMは入る。
もちろん、スキップさせることもできるが、「ドラマ視聴のためのアクセス件数」は、CMを流す企業側にとっても確実な「視聴数字」として見るコトができる。
ネットの強みである「双方向性」を活用するコトができれば、視聴者の分析などもしやすいはずだ。

テレビドラマの「ネット配信」は、これまでとは違う「視聴スタイル」を視聴者側に提案するだけではなく、広告という視点でも、注目されるようになるという気がしている。


コンサートの衣装は、誰の責任?

2016-11-03 19:31:56 | アラカルト

しばらく前に、AKB48の姉妹グループ「欅坂26」のコンサートの衣装が、ナチスの制服を彷彿させると話題になた。
話題というよりも、「問題」になったといったほうがよいだろう。
HuffingtonPost:欅坂46「ナチス風衣装」でユダヤ人団体が抗議 秋元康氏とソニーミュージックに謝罪要求

日本のアイドルのコンサート衣装では、時々「それって、まずいんじゃない?」と思われる衣装が使われるコトがある。
随分前だが、某国民的アイドルのコンサートをテレビの情報番組で紹介されて時、鍵十字を使った衣装で、ビックリしたコトがあった。
ご存じの通り「鍵十字」は、ナチスをイメージさせるもので、今回のような話題にならなかったのは、当時はSNSはもちろん、インターネットなども普及しておらず、世界に向けて情報が発信されていなかったからだろう。

今回の件で、違和感を感じたのは謝罪要求の中に、CDなどの音楽関係のソニーミュージックが含まれていたことだ。
そして、スポーツ紙などではソニーミュージック側の謝罪のほうが、秋元康氏のコメント(謝罪文を読む限り、謝罪をしている、という印象がなかった)よりも、先に大きく取り上げられていた。
ソニーミュージックは、あくまでも「音楽」という部分での責任を負う側で、コンサートの衣装まで責任を負う必要があるのだろうか?と、疑問に感じたのだ。

コンサートで使われた楽曲(=CDに含まれている、あるいはCDに入れる予定の楽曲)ということであれば、音楽的部分で責任を負う、ソニーミュージック側の責任は大きいと思う。
CDジャケットについても、同様の責任を負う必要があるだろう。
責任があるからこそ、何かトラブルが起きた時「CDを回収する」ということができるのだ。
一応オフィシャルサイトをチェックしたのだが、このような衣装のCDジャケットは確認できなかった。
しかしコンサートの衣装となれば、むしろコンサートを演出する側のほうが責任が大きいのでは、ないだろうか?

確かに、謝罪要求をしてきたユダヤ人団体は、ソニーミュージックにも謝罪を要求してきた。
「音楽の部分での責任はとれるが、コンサートの衣装まで責任はとれない」とは、言えなかったのだろう。
それでも、真っ先に謝罪をするのはコンサートをプロデュースする側であり、「ありえない衣装でした」では、済まされないはずだ。
このコメントでは、コンサートを演出する責任というものが、感じられない。

日本では、見た目のカッコ良さだけで、世界的なタブーを無視する傾向がある。
「無視」をしているのか、「無知」なのかはわからないが、今回のようなアイドルの演出では、そのような傾向がある。
ただ「無知」では、済まされないコトなのだ。


子育て環境の発想を、変えてみては?

2016-11-01 19:36:10 | ライフスタイル

今日のYahoo!トピックスに、資生堂が保育所事業の運営受託事業のための合併会社を設立する、というニュースが取り上げられていた。
資生堂ニュースリリース:資生堂とJPホールディングス、事業所内保育所の運営受託を事業の柱とした合併会社を設立

ご存じの通り、資生堂の社員の多くは女性だ。
当然、「働くお母さん」も、他の分野の事業所などと比べると、多いだろう。
その視点で考えれば、今回の資生堂の取り組みは、「働くお母さんの支援策」として、とても有効だと思う。
「保育所落ちた」という匿名のブログから、「保活(保育所に入所させるために、生まれる前から保育所に申し込むなどの活動)」や、保育所不足という問題がクローズアップされた。
母親が安心をして働く環境は、東京をはじめ大都市部になればなるほど、厳しいという現実がある、と言われる。

元々「女性が働きやすい企業」として、資生堂は評価されてきた。
そのことを考えると、今回の「事業所内保育所」というのは、働くお母さんたちにとって「働きやすい環境」を企業が整える、という好例だと思う。
でも、それで本当に良いのだろうか?
なぜなら、「女性が多い職場に事業所内保育所」ということは、あくまでも「育児の中心は、女性任せ」とも考えられるような気がするからだ。

今朝のFM番組を聞いていたら、日本の男性が1日の間で子どもと接する(=子育てに参加している)時間は、わずか1時間7分。
そのような現実を受け「パパ・クォータ制」のように、父親になった男性にある一定期間半ば強制的に「育児休暇を取得させる」という、考えが出てきているという。
リポビタンD TREND EYES: 「パパ・クォータ制」導入検討 男性の育休取得率は増加するか
もし、本気で「パパ・クォータ制」の導入を検討するのであれば、男性社員が多い企業ほど「事業内保育所」を設置の検討も必要なのでは?という気がしたのだ。
もちろん、延長保育は無し。

「延長保育無し」にしないと、保育士さんも残業を余儀なくされる。
「事業所内保育所」設置の意味は、単に「子どもを預けやすい環境づくり=親が働きやすい環境づくり」ではなく、「働き方そのものを見直す」切っ掛けづくりとなることが重要なのだと思う。
「就業時間内に、いかに質の高い仕事をするのか?」という、仕事そのものに対する取り組み方だけではなく、ライフスタイルにまで影響するコトになると思う。
そのくらいの「子育て環境」を作らないと、いつまでたっても「子育ては、女性任せ」になってしまうのでは?という、気がするのだ。